『BLEACH』に続編はあるのか? 新作読み切りに散りばめられた伏線を考察
【※本稿は『BLEACH』読み切りのネタバレを含みます】
『BLEACH』の新作読み切りが、8月10日発売の「週刊少年ジャンプ」第36・37合併号に掲載された。同作は最後の長編となった「千年血戦」後、隊長格の霊子を還す「魂葬礼祭」にまつわるエピソードが描かれている。発売されるやいなや「面白い」、「続きが読みたい」など絶賛する声がSNSに多数投稿されており、今もなお盛り上がりを見せている。
確かに今回の読み切りに、本編に勝るとも劣らないワクワク感が詰め込まれていたことは間違いない。「序儀面霊縛」や「燐気」、「獄頣鳴鳴篇」などの“BLEACH感”あふれる言葉の数々、作者から読者へのメッセージとも受け取れる「扨 僕は帰る 君等は考えろ」というキャラクターのセリフ、頭の中でアニメーションのように再現されるスピード感ある戦闘シーン……。『BLEACH』が好きだった人にとってはたまらない要素がたっぷり詰まっている。さらに、虚との戦闘シーンには、新キャラや懐かしいキャラも登場しており、かつ、それぞれの戦い方を見ることができる。例えば、吉良イヅルが斬魄刀・侘助で自身の足を7回斬りつけ踏み潰すという新しい戦い方を見せていたり、副隊長となった阿近が薬を使って麻雀を思わせる攻撃をしてみせたり。懐かしさの中に新しさも組み込まれているあたりはさすがである。
また、こうした緊迫感のあるシーンが続く中にもクスッと笑える場面が盛り込まれているのも「王道ジャンプ作品」という感じがして良い。涅マユリがホログラムを介して序儀面霊縛の通達をするシーンなど、各隊らしい反応が見えて非常に面白い。ワチャワチャ感があり、護廷十三隊の日常をずっと見ていたいという気持ちにすらなる。
そして、『BLEACH』の十八番とも言える考察ポイントが多いのも今作の面白いところだろう。まず、冒頭の「水槽を回る、二匹の金魚」の下り。ザエルアポロが地獄と尸魂界(ソウル・ソサエティ)の関係を語っているところにも同じ金魚らしきものが登場しているため、二匹の金魚というのは地獄と尸魂界のことを例えているように思える。また、ザエルアポロを連れ戻しにきた浮竹十四郎の斬魄刀「双魚理」も意識されていると考えられるが、それ以外の比喩も含まれている気がしてならない。そして、浮竹の墓について。「魂葬礼祭」は死者の墓の前で現世で捕まえてきた虚を殺す儀式だ。どういうロジックかはわからないが、それによって尸魂界の大地に還れないほど強すぎる隊長格の霊子を地獄に堕とすという。今回、その虚を捕まる前に地獄から来たザエルアポロに襲撃されてしまったため、黒崎一護は「魂葬礼祭」はまだ終わっていないと言っていた。しかし、「地獄の餓鬼(=虚)を皆殺しにしたろう 浮竹十四郎の目の前で」とザエルアポロが言い放つ。そこで一護の死神代行証がアップになっているのだが、これは代行証が浮竹の墓ということなのだろうか。代行証を作ったのは浮竹で、目的は一護の監視のため。とはいえ、「墓」ではない。この代行証は浮竹の魂魄と何らかの関係があったのであろうか。
さらに、気になるのは一護と井上織姫の息子・一勇の行動だ。夜、ベッドを抜け出して地縛霊である“年齢詐称鳴き声ギャップエグおじさん”のもとに行くが、「寂しくないとこつれてってあげる」と道祖神らしきものに緩い儀式を施し、何らかの扉を開く。周りには地獄蝶が舞っているが、ザエルアポロが出てきた穴と似ていることから恐らく地獄への扉だと考えられる。つまり、「大丈夫!みんないるから!」と“年齢詐称鳴き声ギャップエグおじさん”を無邪気に地獄に堕としているということになる。もちろん、一勇は地獄というものを理解していないはずだ。最後の場面でも飛んでいる地獄蝶、さらに、おそらくは浮竹が閉じた地獄門の骸骨を見て満面の笑みを浮かべている一勇。無知の恐ろしさ、そして無邪気さからくる狂気のようなものを感じてしまう。