『あたしンち』ユズヒコが愛される理由 中学生の男の子らしい魅力を考察
金曜日の夜といえば、家族と夕ご飯を食べながらTVアニメ『あたしンち』を見ていた人も少なくないはず。2021年11月5日に単行本『あたしンち NEO(仮)』の発売を予定していることが発表されると、6年ぶりの新刊発売に読者の間で歓喜の声が挙がった。
物語の中心人物として描かれる4人家族の「タチバナ家」。長男である「ユズヒコ」は家族や同級生からユズやユズピの愛称で呼ばれ、学校では密かにファンクラブができたりと、多くの登場人物から親しまれている中学生の男の子だ。
ユズヒコの人気は作中にとどまらず、SNSなどでユズヒコを推す声があがるなど、多くの読者に支持されているキャラクターのひとりと言えるだろう。本稿では人々に愛されるユズヒコの魅力をふりかえっていきたい。
部員が9人に満たない野球部に所属しており、サッポロ一番の味噌ラーメンが好きなユズヒコ。彼は高校生の姉「みかん」と対照的な存在として描かれることが多い。
例えば夕食のおかずが切り干し大根やつけものだったとき、みかんはお母さんに「オカズがつまんない」と話しお母さんを怒らせる。そんなみかんに対しユズヒコは文句をこぼすことなく、台所にあったツナ缶をマヨネーズと混ぜて食べる姿が見られた。
どちらかというと大人しい性格であり、喜怒哀楽がハッキリと表れるみかんとの対比によって、作中ではクールな一面が目立つキャラクターであろう。
しかしユズヒコには、とある女性アイドルのことを好いていた時期があった。クラスの同級生や家族にはアイドル好きであることを隠して、当時はひとりでアイドルの水着姿が掲載された漫画雑誌を堪能する姿も見られた。
また、お母さんがユズヒコのためにヘンなパンツを買ってきたときには、店員さんにパンツの返品交換をお願いすることをためらう様子も描かれている。ユズヒコはその理由を泣きながら次のように話した。
「このパンツこれにとりかえて下さい」とか言うのって「ボクはこういうパンツがはきたいんでーす‼」って宣言することでしょ……
ユズヒコのパンツに対する価値観にみかんは共感できず、みかんの友人である「しみちゃん」は「みかんの弟と思えないくらい繊細だね」と評した。
異性から密かに人気を集め、みかんやお母さんに対し冷静にツッコミを入れることの多いユズヒコのクールな印象とのギャップで、思春期を迎えた男の子らしいウブな一面がより魅力的に映るのだろう。
ちなみに『あたしンち』は連載当時の時代を反映する作品であり、お母さんやお友だちの「水島さん」が作中でスマートフォンを使用する様子も描かれている。今後、ネット通販で自分好みのパンツを購入するユズヒコの姿も見れるかもしれない。
作中で垣間見えるユズヒコの中学生らしい姿は、ウブな一面だけではない。