おかず一品もたまには悪くない? 『あたしンち』お母さんの愛すべき豪快料理を検証
1994年に読売新聞日曜版で連載が開始されたけらえいこ原作の漫画『あたしンち』。タチバナ家の何気ない日常を描いた内容が人気となり、単行本が発売され、2002年にはテレビ朝日でアニメ化された。
そんな『あたしンち』の魅力の1つに、お母さんの豪快すぎる料理がある。今回はそんな他人には思いつきそうもないような料理を検証したい。
ご飯とおかず一個の弁当
お母さんの料理スキルを如実に表しているが、娘・みかんに作る弁当だ。単行本第1巻では、みかんが「おかずに塩鮭一つなんて…」「タラコ単品、コロッケ単品」の日もあると明かし、クレームを入れている。
みかんは「鮭がダメなら入れるものがない」と意図を汲み取ってくれないお母さんに「カラフルな弁当がいい」と注文。すると「ちゃんとそう言ってもらえば、お母さんもわかるよ」と、理解した様子を見せた。
翌日みかんが期待に胸を膨らませて弁当を開けると、そこにはご飯とミックスベジタブルが。一品のおかずがカラフルになっただけの弁当に、みかんは「わかってない」とがっかりするのだった。
ご飯とおかず1つという、唯一無二の弁当を作り続け、ミックスベジタブルを入れることで「カラフル」も実現したお母さん。その発想力は素晴らしいの一言だ。
太巻きの中身・超酸っぱい煮豆
ある日の昼食に太巻きを出し、みかんからクレームを受けたお母さん。その日の夕食は、余った太巻きと、その中に入っていたキュウリ・かんぴょう・たまごやきをおかずに出し、家族を絶句させる。
後日、自然食品スーパーで酢大豆を購入したお母さん。「血圧に良い」「身体が柔らかくなる」「美容に良い」などと家族に勧めるが、誰も食べようとしない。遂にはお父さんに「お前はどうなんだ。毎日食ってるんか」と突っ込まれてしまう。もちろん、食べていなかった。
二週間後、お母さんは酢大豆をたっぷりと入れた超酸っぱい煮豆と味噌汁、ご飯を食卓に出す。誰も食べようとしない酢大豆を消費するための料理ということを感知した家族は「やりおった」と心のなかで悲鳴を上げた。(5巻)
太巻きを出したあとに、その中身をおかずとして出す、食べなくなった酢大豆を消費するために、その全てを煮て夕飯とする。その発想は、実にファンキーだ。