高岡早紀が明かす、“魔性の女”の素顔 「私は私として成長していきたいと思っている」

高岡早紀が語る、挑戦することの大切さ

 俳優の高岡早紀が5月20日に初のエッセイ本『魔性ですか?』(KADOKAWA)を発売した。歌手としてデビューしてから、来年で35年を迎える。本作は、仕事の話から、家族、結婚、離婚、恋愛などのプライベートの話まで、数々の出会いを経て、女優としてのキャリアを築いてきた高岡早紀の素直な言葉に触れられる一冊となっている。

 本インタビューでは、長く第一線で活躍する高岡早紀の仕事観について尋ねてみた。仕事への向き合い方の変化や現場での先輩後輩関係……。インタビューが進むにつれ、そこには仕事に悩む人へのメッセージとも取れる言葉が溢れており、世間が抱く「魔性の女」のイメージとは違った、まっすぐでいちばんに人を思いやる等身大の高岡早紀の姿が見えてきた。(とり)

仕事に対する気持ちの変化

――19歳の頃、『忠臣蔵外伝 四谷怪談』の撮影で深作欣二監督と出会ったことが女優としての転機になったと書かれています。このときの心境を改めて聞かせてください。

高岡:私にとって、何もかも初めてづくしの撮影でした。時代劇に出演するのも、着物を着るのも初めてで、そもそも演技自体がまだ素人レベルな状態で。今となってはお恥ずかしい話ですけど、深作監督のことも何も知らないまま、リハーサル含めて3ヶ月間京都に滞在して撮影に挑んだので、とにかく大変でしたね。できないことだらけで、毎日泣きながらホテルに帰っていました。引き受けた責任もあったので途中で投げ出すことはしませんでしたが、「この撮影が終わったら、女優を辞めよう」と決めていたくらいです。

 転機となったのは、深作監督にかけられた言葉のおかげ。この作品で私が演じたのは「お岩」という春を売る湯女(ゆな)の役で、演じ方が分からず悩んでいたところ、深作監督から「俺は男だからわかんねぇよ。おまえさんは女なんだから分かるだろう?」と言われたんですよね。本作にも書いていますが、この言葉こそが女優の真髄を表していると思いましたし、私に女優としての自信を与えてくれました。

――改めて女優という仕事に向き合えたと。

高岡:もとはCMのキャンペーンガールとして15歳で芸能界デビューし、歌手活動をしていました。その活動と並行して深作監督に出会う前から、ありがたいことに連ドラや映画のお仕事はいただいてはいました。ただ、当時は女優業に対する思い入れもなかったですし、アイドルなのか歌手なのか、肩書きも曖昧で、失礼を承知で言いますと、ひとつひとつのお仕事に深く向きあえていませんでした。そんな感じで活動していたものですから、深作監督の現場で、自分の無知と実力不足を痛感しました。にもかかわらず、クランクアップの日、こんな私に対して深作監督が「女優って楽しいだろう?」と、私の演技を認めてくださったんですよね。このときはじめて「女優という肩書きがほしい」と思いました。もし深作監督との出会いがなければ今頃何をしていたでしょうか。そのまま歌手活動を続けていたかもしれないし、芸能界を辞めていたかもしれない。私にとっては、それくらい大きな作品だったんです。

――やはり深作監督との出会いを機に、演じることの楽しさにも変化があったんでしょうか。

高岡:女優のお仕事が楽しいと思えるようになったのは、つい最近のことかもしれないですね。昔は楽しむ余裕なんてなく、とにかく必死でやっていましたから。もちろん、今でも大変だと感じることはあります。たくさんセリフを覚えなきゃならないし、舞台稽古では同じシーンを何度も繰り返し練習しますし。この大変な作業をいかに楽しめるかってことなんですよね。

――デビューしたばかりの頃は、仕事よりバレエのレッスンを優先させたいとスケジュールに関してマネージャーと喧嘩していたと本作に書かれていましたが、それでも与えられた仕事をまっとうし、今日まで女優を続けているのは凄いことですよね。

高岡:やっぱりこのお仕事が好きだったんでしょうね。いい作品に出させていただいたからこそ、次はどんな作品に出会えるのだろうかと、つい前に進みたくなってしまうというか。とはいえ、自分のプライベートを大事にしたうえで仕事がしたいという考え方は今も変わっていませんが(笑)。

――それこそ、若い頃は特に、いろんな方からご指導を受ける機会があったかと思います。今まさに仕事を頑張る若い人のなかには、あらゆる教えのなかで、どの意見を取り入れていこうか迷っている人もいると思うのですが、高岡さんなりに、その判断基準はどこにありましたか?

高岡:自分がどう思うか、じゃないでしょうか。私はこれまで、本当にいい監督やいい演出家、いい作品に恵まれてきたと思っていて、例えば、初の舞台は蜷川幸雄さん、初のミュージカルは宮本亜門さんにお世話になりました。深作監督もそうですが、やはり彼らの現場を経験することで成長し、学んできた実感はありますね。

 そうは言っても、私、あまり人の言うことを聞いてこなかったんですよね(笑)。誰かの意見ばかりに耳を傾けていたら、その誰かに近づくことはできるかもしれないけど、自分を見失ってしまうじゃないですか。さまざまな経験を重ねていくこと、そして、確固たる自分を持ったうえで、自分にとっての良し悪しを判断していくこと。それが何よりも大事なんじゃないでしょうか。私は私として成長していきたいと思っているし、それはきっと、みなさんも同じですよね。

――その通りだと思います。では逆に、後輩に対して高岡さんがご指導することはあるんでしょうか?

高岡:ほとんどありませんが、たまにお願いされることはあります。ただ、私が人の言うことを聞かなかったように、若い方たちも細かく指導されるのは嫌だと思うんですよね。だから、思うことがあったときに言うべきかどうかは凄く悩みます。特に芸能界では、経験による差はあったとしても、みんな自分の活動に自信を持っている人たちばかりですから。

 舞台稽古だと、先輩も後輩も関係なくみんな同等の立場になって、お互いに尊重しあって意見交換をしています。息子と同年代の俳優さんと共演することも多々ありますが、意見を伝えるときは、教える立場からの物言いにならないようにしないとな、と思っていますね。

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