清水ミチコが語る、“三人のおしゃべり”の秘訣 「ひとの話を聞くことが昔から好き」
ホストがゲスト一人を迎える対談とは異なり、“ふたりのゲスト”を迎える“鼎談”集が話題だ。清水ミチコの『三人三昧 無礼講で気ままなおしゃべり』(中央公論新社)。これは2017年にスタートした『婦人公論』の好評連載をまとめた第一弾『三人寄れば無礼講』に続く、第二弾である。
登場する25組・50名のゲストの多彩で豪華な顔触れもさることながら、「お題なし、すべてアドリブ」で繰り広げられる三人の掛け合いは、ラジオを聴くように楽しく、ときに完成されたコントのようでもある。そこで、改めて“三人のおしゃべり”の魅力などを伺った。
三人だと、なんといっても疲れない
――そもそも「対談」ではなく「鼎談」というスタイルを選んだのは何故ですか。
清水ミチコ(以下 清水):テレビ番組などで鼎談を行ったとき、バランスが良いなと感じたんですよ。それと、昔から和田誠さんの『3人がいっぱい』(新潮社)という本が大好きで、その憧れもあって。「3」ってすごく不思議な数で、二人よりも力が良い感じにばらける奇妙さも手伝って、ぜひやってみたいということになりました。
――清水さんは『ボクらの時代』(フジテレビ)にも、メンバーが変わりつつ、何度もご出演されていますよね。もともと日頃から三人でのおしゃべりを得意としているのかなと思いました。“三人上手”というか。
清水:それ嬉しい! 次回のタイトルにしよう(笑)。でも実際、三人だと、一人がボケても二人ツッコめるし、二人がボケても一人が強めにツッコめばバランスがとれるし、なんといっても疲れないんですよね。実はそれはプライベートでも共通していて。これまでも何人かと海外旅行に行ってきた中で、たまたま「三人がベストだな」という話になったことがあるんです。四人だと二人ずつに分かれちゃうから。三人の場合、1対2に分かれるけど、その場合は1が降参するしかない。でも、それでちょうど良いと思うんですよ、人間関係は。大人だとそういったバランスがうまくいきますね。
――人選がまたすごく豪華ですが、どんな感じに決めていったのですか。
清水:まず私が会いたい人を挙げて、この人とならもう一人は誰が良いだろうと。最初に一人を決めて、そこから出版社の担当者とうちの事務所で案を出し合うかたちです。キャスティングみたいな仕事で、楽しかったですね。長い付き合いの人もいれば、はじめましての人もいますが、鼎談をする上で一度お願いしたのは、録音機を早めに仕掛けておいてということですね。皆さん、会うなりすぐしゃべっちゃうから、用意している間に三人で大事な話とかしちゃうんですよ(笑)。平野レミさん&阿川佐和子さんのときとか、お笑い芸人さんのときなどは、あらかじめ頭の中で喋りたいことを考えてくるらしくて、会った瞬間にいきなり始まるんです(笑)。
――安齋肇さん&みうらじゅんさんの回などは、夜の仕事だと眠くなっちゃうからという理由で、鼎談前に二人で会ってお酒を飲んでからいらしたそうですね(笑)。
清水:そうそう! 二人で飲んできたの(笑)。お酒くさい状態で現れてね(笑)。
――アンガールズさんや三四郎さんのように、コンビの間に入るパターンもありますが、立ち位置が難しくはないですか。
清水:アンガールズも三四郎も、自分のほうが先輩なので、異分子が入っても問題なかったですね。特に三四郎は初対面に近かったんですけど、それでも怖くないというか、むこうも受け入れるしかないというか(笑)。もし私が新人で、エライ人を二人呼んでその中に入るのだとしたら、浮いちゃうと思うんですけどね。
――稲垣えみ子さんと中瀬ゆかりさんの組み合わせなんて、どうして思いつくんだろうと思いました。
清水:中瀬さんが霊媒師の方に「俺のフライパン、捨てただろう」と言われた話とか、自由人の稲垣さんが実はビジネスアフロで「髪型だけが不自由」という話とかね(笑)。中瀬さんとはラジオでご一緒したときにものすごく面白くて、稲垣さんは有名な方だし一度会ってみたいと思っていたんです。ただ、エコの話とか文化的な話をするかと思ったんですが、組み合わせによって思いがけない方向に話がいくことがあるんですよね。榎木孝明さんとヤマザキマリさんの「不食」とか、イタリアの酷い生活の話も意外でした。普通はイタリアに住んでいる人って、羨ましいと感じるような素敵な話をしそうなイメージですけど、意外と大変なんだなと思いましたね(笑)。
――清水さんのポジションが、組み合わせによってMCだったり、ツッコミであったり、聞き役であったり、自在に変わるところも興味深いポイントです。
清水:後半になっていくと、「これ、使えない話だから次にいってもらおう」ということはありました。話している分には面白いんだけど、編集部が書けることがなくて困るような場合もありますから(笑)。みうらさんとか、今回の本ではないですけど、近田春夫さんとかね。非合法な話題で、こんな人がいた、こんな目に遭ったというのは、みんな話したいみたいですよ。
――スイスイ読めてしまうのに完成された台本のあるコントじゃないかと思うような回もありますよね。清水さんがご自身の立ち位置や役割を意識する部分もありますか。清水:私は、あまり自分の役割を考えないようにしています。考えてしまうと、「あ、仕事モードになった」という水臭さが出てしまって、トーンダウンすることがあるので。ただ、私自身がジャズ喫茶の実家で育ったので、カウンターに座ってひとの話を聞くことが昔から好きだし、慣れているところはあるんですよ。「言いすぎているな、この人」「ちょっと今、とばしすぎてるな」「こっちに話をまわせば良いのにな」とか、しょっちゅう感じてきたことは生かされているかもしれない。