『古見さんは、コミュ症です。』の少女漫画的な魅力とは? 友達づくりの物語が描き出す、ピュアな感情

『古見さんは、コミュ症です。』の魅力

 県内でも有名な進学校・私立伊旦高校に入学した、“只野くん”こと只野仁人。今までずっと普通を自認してきた只野くんは、平和な学校生活を送るべく周りの空気を読んで目立たずに過ごそうと決意。しかし、登校初日にして学校のマドンナの地位を築くまでの美人「古見さん」の隣の席となってしまう……。

夢は友達100人作ること

『古見さんは、コミュ症です。(1)』

 そんな導入から始まれば、どんなラブコメが展開されるんだ!?と想像する読者も多いはず。しかし本作『古見さんは、コミュ症です。』(小学館)は、いわゆるラブコメでも、もっと大きく言えば『週刊少年サンデー』の連載ながら少年漫画でさえない。もう少し、中身を見てみよう。美人ゆえにか、どこか周りを拒絶する雰囲気の古見さん。しかし加えてどこか挙動不審なところから、彼女は人と話すことが苦手なのだと只野くんは気づく。

 本当はしゃべりたいけれど、人前に出ると緊張で固まってしまい、無理に話そうとすると激しく震えてしまう。黒板での板書を通じて、初めてきちんと会話するふたり。そこで古見さんの夢が友達を100人作ることだと知った只野くんは、そのひとり目の友達になって、残り99人の友達作りを手伝うことを約束する。

 そう、本作は『古見さんは、コミュ症です。』のタイトルどおり、“コミュ症”の女の子と“小心者”の男の子を中心とした青春グラフティ。ふたりが友達となっていく面々と織りなす高校生活が、コミカルにも味わい深く描き出されている。

 只野くんと古見さんの距離も近づいていく中、そこにフューチャーされてくるのは恋愛の要素。また、本当の自分をさらけ出したうえでの友達づくりの物語ということでは、『まっすぐにいこう。』(きら)や『君に届け』(椎名軽穂)、『彼氏彼女の事情』(津田雅美)や『となりの怪物くん』(ろびこ)も彷彿させる。ラブコメでも少年漫画でもない、『古見さんは、コミュ症です。』。その手触りはひと言で言えば、少女漫画だ。

 何よりそう思わせるのは、本作が目の前の相手のかわいらしい一面を発見していく物語なのだという点。只野くんが古見さんの中にそれを見出すだけでなく、彼らと関わるさまざまなキャラクターがお互いの中に発見していく。たとえそれは本作においては恋の始まりではなくても、ラブストーリーというものの出発点であって、またコミュニケーションの到達点でもある。相手を知ることは相手を好きになることで、相手を好きになることは相手を知っていくこと。そんな忘れがちだけれど大事なことを、あらためて教えてくれる。

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