『時をかける少女』『ハイポジ』『東京卍リベンジャーズ』……タイムリープ作品の魅力を考察

タイムリープ作品の魅力を考察

『ハイポジ』

ハイポジ
『ハイポジ』(双葉社)

 「漫画アクション」に掲載されていた『ハイポジ』では、46歳の冴えない中年である天野光彦が風俗店で転倒したことをきっかけに、46歳の記憶を持ったまま16歳の自分にタイムスリップしてしまう。そこでかつて恋心を抱いた同級生の小沢さつきと現在の妻である司幸子と出会い、心が揺れ動く様子が描かれている。現代でこそ会社をリストラされてしまうというイマイチな光彦だったが、タイムスリップをきっかけに垢抜けていき、女性からも想いを寄せられるようになっていく。

 タイムスリップをしたことで分かりやすく自分が変わっていくという、「もしも」の世界を一番端的に表している作品ではないだろうか。しかも、変えなければいけない事象などの目的があってタイムスリップをしているわけではないため、ストーリーも至ってシンプルでわかりやすい。さらに同作の舞台になっているのは1986年。作中には80年代のカルチャーや音楽が詰め込まれており、作者のきらたかし氏が描く絵柄も絶妙にマッチしている。

 そのカルチャーや音楽を楽しむという目線でも味わうことができる、というわけだ。最終話では光彦は現代に戻り、リストラ、離婚という結論は変わっていないが、娘と交流ができたり、妻から「離婚してから話しやすくなった」と言われていたり、徐々に希望が見えて終わるのもいい。この心地よい余韻が味わえるのも。タイムスリップという要素があってこそだ。

『東京卍リベンジャーズ』

東京卍リベンジャーズ
『東京卍リベンジャーズ』(講談社)

 4月からアニメ化されている『東京卍リベンジャーズ』。同作は抗争に巻き込まれて死亡してしまった中学時代の彼女・橘日向を救うために、主人公・花垣武道がタイムリープを重ねて未来を変えようとしていくストーリーである。

 とはいえ、相手となるのは中学時代には暴走族、現代では極悪集団の「東京卍會」。一筋縄で行くはずもなく、とにかくミッションを失敗しまくる。さらに、タイムリープできるのはその日の12年後のみ。2021年5月10日にタイムリープをした場合、2009年の5月10日にしか行けない。さらに2021年に戻るのもそうだ。12年前で5日間過ごした場合、2021年5月15日に戻り、再び過去にタイムリープする場合は5月15日以降にしか行けない。

 例えば、5月12日に未来を変えるターニングポイントがあっても、もう戻ることはできないというわけだ。だからこそ武道はがむしゃらにミッションをクリアする努力をする。しかも熱いヤンキー漫画というベースもあるため、余計必死感が出ており、感動も大きい。熱さと感動を倍増させるために、制限付きのタイムリープがあると言っても過言ではないはずだ。

 その他にも、『僕だけがいない街』、『ひぐらしがなく頃に』、『STEINS;GATE』、『魔法少女まどか☆マギカ』など、「タイムリープ」、「タイムスリップ」が関わる人気漫画作品は多々ある。気軽に外出することができない昨今、お気に入りの作品を見つけ、SFの世界に浸ってみるのもいいかもしれない。

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