マンガ大賞4年連続ノミネートの『ダンジョン飯』 バトル×魔物グルメの超美味ミックスを堪能

『ダンジョン飯』バトルとグルメの美味MIX

 新奇性が喜ばれがちなマンガ大賞ではだんだんと順位を下げて、2019年を最後に外れてしまった。あらゆる表現は完結するまで分からないということだ。これは、完結が近づく諫山創の『進撃の巨人』にも当てはまる。第4回にノミネートされたが、羽海野チカの『3月のライオン』が受賞して『進撃の巨人』7位に留まり、以後はノミネートから外れた。今となっては、相対的な善悪を描いて人類史に挑む歴史的な傑作になっているが、当初は、強大な巨人に人類が必死で挑む怪獣パニックものの変形に見られ、衝撃が長続きしなかった。

 振り返れば、後に大ベストセラーとなった作品に、マンガ大賞は授賞し損ねてきた。第1回で石塚真一『岳 みんなの山』(小学館)が大賞となった時の次点があずまきよひこ『よつばと!』。全世界累計で1700万部の人気作だが、すでに第7巻まで来ていて、間もなく資格を失ってしまった。

 「週刊少年ジャンプ」連載で人気の『僕のヒーローアカデミア』や『チェンソーマン』、『約束のネバーランド』も、ノミネートされながら届かなかった口で、社会現象を起こしている『鬼滅の刃』や『呪術廻戦』に至っては、ノミネートすらされていない。評判が広がり始める2年で、規約の8巻に達してしまう週刊連載漫画には厳しい賞だと言える。

 もっとも、受賞を逃してもノミネートされなくても、面白い漫画は面白い。『ダンジョン飯』も同様で、大きなテーマを得てなお笑いをぶち込んでくる展開に、読んでは転げ回る日々が続いている。パーティ仲間を殺されながら、マルシルが凶暴な首刈りうさぎに挑んだ際の描写など、死んだら誰も蘇生できなくなるというシリアスな状況ながら、とった手段は実にユーモラス。グルメ描写も変わらず続いて、美味そうな料理が続々と提示される。

 世界のために戦い食らうライオスの冒険が終わる時まで、そんな妙味をひたすら味わっていけそうだ。

■タニグチリウイチ
愛知県生まれ、書評家・ライター。ライトノベルを中心に『SFマガジン』『ミステリマガジン』で書評を執筆、本の雑誌社『おすすめ文庫王国』でもライトノベルのベスト10を紹介。文庫解説では越谷オサム『いとみち』3部作をすべて担当。小学館の『漫画家本』シリーズに細野不二彦、一ノ関圭、小山ゆうらの作品評を執筆。2019年3月まで勤務していた新聞社ではアニメやゲームの記事を良く手がけ、退職後もアニメや映画の監督インタビュー、エンタメ系イベントのリポートなどを各所に執筆。

■書籍情報
『ダンジョン飯』1〜10巻(ハルタコミックス)
著者:九井諒子
出版社:KADOKAWA

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