『呪術廻戦』夏油傑はなぜ闇落ちした? 五条悟との関係性を考察
旧■■村の任務の際、非術師の醜さに嫌気が差し、非術師を皆殺しにするべく闇落ちしてしまうが、ここからが2人目の夏油と言える。夏油の高専生時代を描いている「懐玉編」「玉折編」で一番初めに登場した時、「悟 弱い者イジメはよくないよ」と言っていたにもかかわらず、その弱者を切り捨てる選択をした夏油。180度考えが変わってしまったのは、彼が究極に真っ当だったからなのかもしれない。真っ当だったからこそ、理想と現実の大きな乖離に耐えられなかったのではないだろうか。
呪術界に謀反を起こした夏油は、特級過呪怨霊・祈本里香を手にするため新宿と京都で百鬼夜行を実施。乙骨憂太と対峙して痛手を負ったところで、五条にとどめを刺されてしまう。だが、その後「史上最悪の術師」と言われ、特級呪物「呪胎九相図」を生み出した加茂憲倫に体を乗っ取られてしまうのである。この“偽夏油”が3人目、+αの夏油というわけだ。
1人目は非術師を守るために、2人目は呪術師のみの世界を創るために、3人目は自分の可能性の域を大きくはみ出すほどの呪術全盛の平安の世を創るためにと、それぞれ目的があった。その善悪は別として、各人にとってはその目的こそが正義である。特に2人目までは、心情の変化の細かな描写があるからこそ、彼の行動に理解が追いつく。我々も生きていく上で大なり小なり考えが変わることはあるだろう。だからこそ、五条にとどめを刺されるまでの心境の移り変わりと苦しさに、同情と共感のような感情を抱いてしまうのではないだろうか。
ひと言で語り尽くせない夏油が、人気キャラなのも納得だ。この先、夏油あらため加茂憲倫がどうストーリーに関わってくるのだろうか。本物の夏油にとっても、封印されてしまっているかつての親友の五条にとっても、そして主人公の虎杖悠仁にとっても。全ての登場人物にとって良い形となる世界が広がることを、期待したい。