『呪術廻戦』夏油傑はなぜ闇落ちした? 五条悟との関係性を考察
※本稿には、『呪術廻戦』(芥見下々)および、『呪術廻戦 公式ファンブック』 の内容について触れている箇所があります。未読の方はご注意ください。
夏油傑は、被害者なのかもしれない。『呪術廻戦』について思考を巡らせていると、そんな風に思ってしまう。
順調に術師としてのキャリアを積み重ねていたが、呪霊を取り込み続けなければいけない苦しさ、弱者(=非術師)の醜悪、術師というマラソンゲームの不透明さに嫌気がさして闇落ち。
その果てに親友である五条悟に殺されてしまったのだ。そこで終わりかと思えば、体を乗っ取られてしまっている。そんな彼の人生を振り返ってみると、「彼もある種の被害者なのでは」と思わざるを得ない。だからこそ、作品上敵であっても夏油のことは憎めないのではないだろうか。
そもそも、「夏油傑」というキャラクターは3人、厳密に言えば2人+α存在すると考えたほうがいい。1人目は、高専時代の夏油傑。当時は「呪術は非術師を守るためにある」と考え、五条がそれを否定する側だった。唯一無二の親友であった五条とは対等で、切磋琢磨し合い、時にぶつかりながらもうまくやっていた。公式ファンブックによると、むしろ五条が夏油の判断を善悪の指針にしていた、というくらいだ。だが、伏黒甚爾との闘いの後に五条が覚醒。五条と夏油の間に大きな実力の差が生まれてしまう。
こうして疲弊していたところに現れたのが、特級呪術師の九十九由基。彼女に「非術師を見下す君 それを否定する君 これらはただの思考された可能性だ」、「どちらを本音にするのかは 君がこれから選択するんだよ」と言われたことが、もしかするとトリガーになっていたのかもしれない。