ISHIYA × TOSHI-LOWが語る、ハードコアパンクのつながり 「本当はみんな、自分の心の中にある大事なものでつながりたい」

ISHIYA × TOSHI-LOW ハードコア対談

俺たちなんて、生きてることが奇跡

TOSHI-LOW:FORWORDが海外ツアーから帰ってきたとき、盛岡で一緒にライブやったよね。

ISHIYA:海外ツアーは日本でやってたツアーの延長で行くようになったんだけれど、国が違って、ライブハウスの事情とかが違うと、すごく面白いんだよね。その分、めちゃくちゃきついけれど、力も付く。まだ今でも行きたいもんね。TOSHI-LOWと一緒にやったときは、2016年のアメリカツアーで25回ライブをやった後だ。

TOSHI-LOW:そう、海外で25回のライブを経た直後のバンドだから、すごいんだよ。久しぶりにライブをやった俺たちとは雲泥の差があって、やられまくった(笑)。帰ってきたばかりだというのに、みんなピンピンしてるし。

ISHIYA:たぶん、脳内に変なものが出ていたんだろうね。「なんでもいける!」って感じになるから、自分たちでもびっくりだよ。

TOSHI-LOW:楽屋でISHIYA VS 秋山のプロレス合戦が始まっちゃって(笑)。この人たちはもはや怪物なのかと。海外ツアーでもリハはほとんどやらないんでしょう?

ISHIYA:海外行くと、リハは自分たちのためじゃなくて、ミキサーやエンジニアの人のためにやるもんだって気付くんだよね。だから、エンジニアの人がやってくれと言った時はやるけど、自分たちはやらなくていいと。だって、そのライブハウスについて一番知っているのは、プロのミキサーやエンジニアなんだよね。だから、俺たちは自分たちのできることをちゃんとやって、あとは信頼してまかせる。それに、ツアー先でリハのために3時入りとか4時入りするのは嫌じゃない? 前日朝まで飲んでたり、日本では考えられない距離の移動とかあるんだから、リハよりも体調を整えるのを優先したい。勝負はステージだから、そこでかっこいいことをするのに集中するのが一番大事。「飲むのを我慢すれば?」という意見もあると思うけれど、いつ会えるかわからない、二度と会えないかもしれない友達と会ったら飲みたいよ。それもツアーの楽しみだから。

TOSHI-LOW:やってみたら、まったく音が聞こえないとかはないの?

ISHIYA:あるよ。全然ある。でも、じゃあどうすれば聞こえるようになるのかをその場で調整するよね。狭い箱だし、ボーカルなんてなんとかやれる。もちろん、BRAHMANみたいにでかいステージでやるときに、モニターが鳴ってないとかはダメだと思うけどね。海外ではどんなにアンダーグラウンドな小箱でも、スタッフはバーテンダーからミキサーまで全員がプロフェッショナルだから、その人たちを巻き込んで任せるのが一番だよ。お客さんからスタッフまで、全員が納得できる良い空間を作るのがライブだからさ。それに、一度信頼関係ができてしまえば、次に行った時に「イェーイ!」ってなるじゃない? それが楽しいんだよ。

TOSHI-LOW:信頼関係ね。この本でも重要なキーワードだし、それですべてが結びついて、図になっていくんだよね。

ISHIYA:昭和のハードコアの人たちの信頼関係を見てきたからこそ、俺もそういう考え方になったんだろうね。今から考えるとすごく短い、たかが何年という話だけど、濃かったね。

TOSHI-LOW:…嘘がないんだよね。本当のことを書くことの覚悟があるし、だからこそ、友達の死について書いているところは泣いてしまう。やっぱり友達の死って一番言葉にしづらいし、一番辛いことじゃない。

ISHIYA:でも、一番伝えたいことなんだよ。だってみんな死ぬんだもん、否応がなしに。俺には実感と体験しか書けないんだから、そこはちゃんと書いておかないとなって思っている。むしろ俺たちなんて、生きてることが奇跡だよ(笑)。

TOSHI-LOW:いつ死んでもおかしくない人しかいないからね、この本に出てくる人達は(笑)。でも、その一つひとつにちゃんとお別れの挨拶をしている。それもこの本の伝わるところだよね。

ISHIYA:生きてる時にできなかったことへの後悔、反省だよね。今、書いたって本人たちには伝わらないのに。でも、書くことで昇華できることもあると信じている。

TOSHI-LOW:音楽のつながりはずっと残っていくからね。ジャパニーズハードコアのバンドが海外に行って、今でも現地の人がTシャツ着て「俺はDEATH SIDEが好きなんだ、BASTARDが好きなんだ」って言ってくるのが、すでに一つの答えだと思う。今はスマホもあるし、ネットもあるし、いつでも誰かとつながっているように思えるけれど、でもそのつながりって希薄じゃない? 本当はみんな、自分の心の中にある大事なものでつながりたいと思っているわけ。この本はそういうつながりを証明しているからこそ、求められているんだと思うんだよね。そんな本が売れているなら、世の中まだ捨てたもんじゃないよね。

ISHIYA:パンクは70年代からずっと世界中でつながってきた音楽だしね。中でもハードコアはアンダーグラウンドなシーンだから、日の目を見ることはなかなかないけれど、そこで共鳴しあえるのは楽しくてしょうがないよ。普通に考えて、家もなくてマクドナルドの廃棄されたハンバーガーを拾って食ってたような奴らが、海外に行ってライブできるわけないじゃない? でも、それができるのがハードコアのつながりなんだよ。

■書籍情報
タイトル:『ISHIYA私観 ジャパニーズ・ハードコア30年史』
著者:ISHIYA(FORWARD/DEATH SIDE)
ISBN:C0073 978-4909852-13-7
発売日:2021年1月10日(日)
価格:2,500円(税抜)
発売元:株式会社blueprint

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