社会は同性愛に対して本当に寛容になったか 昭和の“百合”描く『夢の端々』の問いかけ

社会は同性愛に対して本当に寛容になったか 昭和の“百合”描く『夢の端々』の問いかけ

 「FEEL YOUNG フィール・ヤング」(祥伝社)で連載されていた須藤佑実の『夢の端々』。本作は、2018(平成30)年、認知症を患う伊藤貴代子の元にかつての恋人・園田ミツが訪れる場面から始まる。

 50代で熟年離婚をした後、娘のえり子と孫の杏奈、ひ孫の莉李と親子三代で暮らしている貴代子は家に引きこもりがちで、人付き合いはほとんどない。そんな彼女と唯一接点を持ち続けているのが、共に齢85のミツだ。どこか暗い影を落とす貴代子とは違い、ミツは同い年とは思えないほど若々しく少女のように明るい。

 認知症を患い家族の顔さえも忘れゆく中、不安に苛まれる貴代子にも彼女はまっすぐな瞳で「一番最後に残るのはきっと私との思い出よ」と告げる。だが、その言葉を最後にミツは交通事故により他界。突然の出来事に貴代子の症状は日増しに悪くなっていく。そんな時、貴代子が持っていた日記帳の中に“小指”の一部を見つけた杏奈。貴代子は左手小指の第一関節から先を、周りには「戦争で失くしてしまった」と説明していたのだ。

 そんな衝撃的な第1話から、物語は少しずつ貴代子とミツが出会う1948(昭和23)年までの日々を遡っていく。戦後の女学生時代に出会い、心中未遂を図るほど思い合っていた2人は、なぜ「共に生きる」という人生を選び取ることができなかったのか。結末がわかった上で物語を追っていくと、貴代子とミツが互いの愛を貫くことの難しさがまざまざと浮かび上がる。

 しばしば女性同士の恋愛は百合、男性同士の恋愛は薔薇と表現されることがある。これは日本初の男性同性愛者向けの雑誌『薔薇族』の編集長が、ギリシャ神話に登場した「薔薇の下で男同士が契りを結ぶ」という話からゲイを“薔薇族”、さらにその対義語としてレズビアンを“百合族”と名付けたことから由来している(諸説あり)。元々隠語として使われていた百合というジャンルが2003年に漫画化、翌年にテレビアニメ化され小説『マリア様がみてる』シリーズをきっかけに普及。現代ではガールズラブ(GL)、同じく男性同士の恋愛モノもボーイズラブ(BL)として人気を博している。

 しかし、同性愛を扱ったエンタメ作品が一般にも受け入れられるようになってきた一方で、現実世界は貴代子とミツが恋に落ちた昭和の時代から大きく変化を見せていない。パートナーシップ制度を導入する自治体は増えてきているが、未だに同性同士の結婚は認められておらず、偏見はまだまだある。

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