『東京喰種:re』生き延びた金木は幸せなのか? 物語に込められたメッセージを読み解く
守るものが増えたことで金木は生きなければならなくなった
金木の「ハイセとしての穏やかな生活」は続かなかった。かつての自分と対峙することで、背負うべきものが増えていく。性格も変わり、金木のころより表情は暗く、冷徹になっていった。やがてハイセはCCGを去り、喰種側へと戻る。
「人間」との関係を新たに構築したハイセは、喰種と人間を相対するものにしたくないという気持ちが芽生え、常に心が揺れていた。
そんな中で、ハイセは喰種のトーカと結ばれ、人間と喰種の戦いが激化する中で子どもを授かる。喰種たちの命、かつて心を通わせた人間たち、そしてこれから生まれてくる「家族」。かつて死にたがっていた金木は、次第に「生きなければならなくなって」いく。たとえ、それが多くの人たちの犠牲の上に成り立っていたとしても。
喰種と人間は捕食する側とされる側の関係だ。それが金木研という半喰種の存在によって、最終的には共存の道を歩み始める。
金木はずっと死にたかった。それでも生き続けることで、ひとりぼっちだった彼は家族と仲間を得た。守る存在が増えた。それは金木にとって幸せなことなのか、それとも重荷なのか。
「生きていればいいことがある」とはなんとも平凡な言い回しだ。本当は生きていれば辛いことも幸せなこともある。誰かに必要とされるときも来る。生き続けなければ、それを知ることもできない。 『東京喰種:re』には、そんなメッセージが込められているのかもしれない。
(文=ふくだりょうこ(@pukuryo))
■書籍情報
『東京喰種トーキョーグール』シリーズ
(ヤングジャンプコミックス)
著者:石田スイ
出版社:集英社
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