phaが語る、自由恋愛の末にたどり着いた“虚無” 「恋愛の本質は刹那的なもの」

phaが語る、自由恋愛の末にたどり着いた“虚無” 「恋愛の本質は刹那的なもの」

脳内で幻想を作って熱を上げるのが恋愛

――マッチングアプリで恋愛する人も増えていますが、それについてはどう思いますか?

pha:次から次にいろんな人とマッチして、常に新しい刺激を得られそうですよね。僕はメッセージのやりとりが面倒なのでやる気はしませんが、いいか悪いかは別にして、それは交際や結婚にとらわれない純粋な恋愛なのかもしれないですね。恋愛の本質は刹那的なものだと思います。僕の中には「叶わない片思いをずっと続けていたい」という気持ちがありますね。

――近代的な自由恋愛の行く末が今なのかもしれません。実はお見合いの方が良かったんじゃないか、と感じることもあります。

pha:そうかもしれません。お見合い結婚は悩む必要がないですからね。現代は恋愛を縛る色々なものから解放されたのは良かったとは思うのですが、だからといって幸せという訳ではない。結局のところ、完全に自由になったら全ては虚しくなってしまうのかもしれない。

――では未来の恋愛についてはいかがですか? SF的な話ですが、AIと恋愛する時代もそう遠くない様な。

pha:従来型の結婚や恋愛に縛られないと考えたら、別に相手はAIでもいいかもしれないし、動物を相手にしてもいいのかも。去年、濱野ちひろさんの『聖なるズー』を読んで思ったことですが、ペットを家族と同じと考えれば、セックスするのも普通なのかもしれない。AIやロボットに恋をすることもあるでしょうね。

 アイドルやVTuberにハマって生きる意味を見出す人もいます。憧れる人を追いかけて、その人のことを考えると胸がときめく、というのは人間にとって必要なことだと思うんですよ。アイドルだったら人間関係がこじれることもないですから。

 僕は恋愛はもう疲れた、という気分が大きいのですが、恋愛的な気持ちを全く持たずに生きていけるかという自信はない。代替的なものとしてアイドルとかにハマるのはありなのかもしれない。なんか、つらいときとかにその人のことを考えると気分が上向く、という人はいてほしい気がするんですよね。

――どんなにテクノロジーが発達しても、感情を向ける対象が変わっても、先ほどの「片思いがいい」「セックスする前が楽しい」という概念は残る?

pha:恋愛の本質だと思います。それは「手の届かない何かに憧れる」ということで、もし叶ってしまったら「関係を続けていく」という別のゲームが始まってしまう。でも僕は安定した関係をパートナーと続けていくことに興味が無かった。現実はそんなに面白くないので、脳内で幻想を作って熱を上げるのが恋愛です。関係を長く続けると現実との折り合いを付ける必要が出てきて、最初の熱は冷めてしまう。

――ところで、phaさんは去年から「エリーツ」というロックバンドのメンバーとしても活動されています。バンド活動も恋愛に似たところがあって、人間関係が面倒なのでバンドを組まずに活動する人も多いです。

pha:恋愛だと1対1だけど、バンドは3人以上でできるので、煮詰まりにくい感じがするんですよね。セックスは基本的に2人でしかできないけど、セッションは何人ででもできますから。バンドを組まない人はひとりで色々できるんだろうなと思います。僕はひとりでやるほどの音楽の才能はないし、あまりできない人同士で補い合って活動するのがバンドという感じです。

――なるほど。それはシェアハウスに似ているところがありますね。

pha:そうですね。シェアハウスに居た頃は、家のなかで同居人とゆるく生活しつつ、外で恋愛したりセックスしてました。その生活で「家の中で何となく寂しさを埋めているから、女性をパートナーとして大事にできないのでは?」と感じたのが、シェアハウスを出たきっかけのひとつでした。出たらパートナーが欲しくなるかなと思いましたが、2年間ひとりで暮らしても今のところは無いですね(笑)。

 先は分かりませんが、自分の体が弱くなってきたら変わってくるのかもしれません。今は猫に癒されているので、猫が死んでしまったら誰かと一緒に住みたいとなるのかな。それが恋愛と結びつくかも分かりません。もしかしたら恋愛抜きで誰かと一緒になるかもしれないですし、また恋愛をしてしまうかもしれない。

――次回作などはお考えになってますか?

pha:小説を書くのは楽しかったのですが、もう恋愛については描き切ったので、書くとしたらシェアハウスでダラダラする話とかがいいかな。あとは恋愛とかセックスと同じくらい切実なテーマである「死」については書いてみたいかも。あと十年か二十年か経って、もっと死が身近なものになってきたら、ですが。

■phaプロフィール
1978年、大阪府生まれ。作家。京都大学総合人間学部を24歳で卒業したのち、25歳で就職。できるだけ働きたくなくて“社内ニート”になるものの、30歳を前にツイッターとプログラミングに衝撃を受けて退社し上京。シェアハウス「ギークハウスプロジェクト」を主宰し、”日本一有名なニート”と呼ばれた。著書に『持たない幸福論』『しないことリスト』『どこでもいいからどこかへ行きたい』などがある。 初の小説『夜のこと』が11月15日発売。

■書籍情報
『夜のこと』
著者:pha
出版社:扶桑社
発売日:2020年11月15日
予価:1,300円+税
予約サイト:https://amzn.to/3jo8vla

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