「LINEマンガ」担当者が語る、ウェブトゥーンの次なるステップ 「グローバルで人気になる可能性は十分にある」
マンガアプリとしてダウンロード数が3000万超と日本最大のサービス「LINEマンガ」。日本においてスマホでマンガを読む習慣を付けた立役者のひとつといっていい存在が、次に狙うものとは?
LINE Digital Frontier株式会社 COO 平井漠氏に現在の戦略を訊いた。
■LINEマンガでしか読めない作品からヒットを作っていく
――日本でマンガアプリがリリースされるようになって6、7年経ちますが、今の状況をどう捉え、LINEマンガをどうしていきたいと考えていますか。平井漠(以下、平井):電子書籍の市場環境はしばらく拡大傾向が続くと思います。一方で紙媒体の市場は縮小傾向が続いており、これは作品発表の場が少なくなっている事を意味していると思います。デジタルで作品を発表し、ヒットが生み出される構造が作れないとマンガ文化が廃れていくのではないかという思いがあるので、我々としてはLINEマンガのオリジナル作品や出版社と組んだ独占作品の配信を通じてヒットを生み出していくプラットフォームを目指していきたいです。
――LINEマンガでは、大きく分けると、電子取次のメディアドゥ経由で出版社から調達したほかの電子書店でも販売されている作品、出版社と組んでの独占配信作品、LINEマンガオリジナル作品(LINEマンガ編集部によるものと、韓国のNAVER WEBTOONのもの)の3種類が配信されています。巻売りではなく話売り(話レンタル)作品は、以前はすべて「曜日連載」のタブにまとめられていたと思いますが、現在では出版社が提供する作品は「毎日無料」にまとめられ、出版社の独占配信作品やLINEマンガオリジナル作品は「曜日連載」と分かれています。結果、出版社から提供されるマンガはかつてより目立たなくなったように感じますが、これはどういう意図ですか?
平井:読者と作品との出会いをいかに生み出すかを一番重要なミッションと考えています。読者からすると出版社から提供いただく非独占作品でもオリジナルでも、知らない作品であれば「新しい作品」ですから、その意味において私たちは分け隔てなく作品との出会いを多く生み出そうと日々取り組んでいます。ただ、LINEマンガでしか読めないオリジナル作品や独占作品というのは連載中の現役作品となり、私たちのプラットフォームの中でも特別な作品です。我々のプラットフォームからヒットを生み出したいという思いにもつながりますが、ユーザーにも特別な作品だと示す必要があると思います。そこで、LINEマンガでしか読めない現役の連載作品を「曜日連載」に、完結した作品を「毎日無料」に表示を分けるようにしています。
LINEマンガのオリジナル作品は完結したものも含めてすでに370以上あり、これらのオリジナル作品や独占配信作品は今後プラットフォームの大きなコアバリューになっていくだろうと考えています。
――集英社の「ジャンプ+」からは単巻100万部クラスの『SPY×FAMILY』が生まれました。そうした出版社発のマンガアプリオリジナル作品と比べるとLINEマンガオリジナルには目立ったヒットがないと感じているマンガ関係者も多いようですが、何が課題だと認識し、どのような取り組みをしていますか。
平井:ヒットの基準を何に置くかですが、LINEマンガオリジナル作品では読者数が月間200万人を超える作品もあります。我々としては作家さんが発表しやすい環境、読者に読まれやすい環境や仕組みをいかに作っていくかが重要だと考え、注力しています。
――具体的には?
平井:発掘に関してはインディーズ(作品投稿)サービスを運営し、学校訪問や出張編集部への参加など作家を目指している方にインディーズでの発表を呼びかけています。インディーズでは担当者が1人でも面白いと感じた作品に声をかけ、期間限定で「トライアル連載」を実施しています。そして読者から人気が得られれば継続して連載していく仕組みを採用しています。
――インディーズでトライアル連載をしている作家にも編集者が就く?
平井 担当は必ず付きますが、インディーズ経由の作家さんには自由に描いていいというスタイルを貫いています。編集者は作家さんに作品実績の共有やアドバイスをし、作家さんが描きやすい環境づくりに集中してもらうのが仕事です。
――NAVER WEBTOONの作家と編集者の関係に近いですね。
平井:そうですね。ただ、作家さんの特性によって編集者といっしょに作っていったほうがよい場合もあり、そのあたりは作家さんに合わせながら柔軟にやっています。
――LINEマンガオリジナル作品の編集者と作家の関係は?
平井:出版社さんの編集部に近く、二人三脚で企画を考え、ネームから見ていく作り方をしています。ヒットに関しては狙って出せるものではないですし、紙のマンガ雑誌でも長い期間をかけて1つ2つ出るかというのが普通ですから、作家さんとしっかりコミュニケーションを取りながら一緒に作品づくりに取り組んでいます。