『SLAM DUNK』流川楓が示した“天才の生き様” 桜木花道に与えた影響を考察

『SLAM DUNK』流川楓の天才性

 流川は決して完璧な人間ではない。弱点がないわけではないし、そもそもその才能の土台には血の滲むような努力がある。翔陽戦の前、それまでの試合で全く活躍できずに凹み、アドバイスを求めて赤木の家を訪ねた桜木は、その帰り道、夜の体育館で流川が1人で練習しているのを目撃している。

 豊玉戦では、エースキラー・南の意図的なファウルをくらい、左目がほとんど見えない状態にも関わらず、流川は「何百万本もうってきたシュートだ」と決めてみせる。

 流川の努力も葛藤も、私たちは外側から見ていることしかできない。けれど、そんな流川の姿を見た後、桜木はいつも発破をかけられて、彼自身も周囲を驚かせるようなプレイを見せる。左目が見えない流川がシュートを決めた後、桜木もまた、初めて「合宿シュート」を成功させる。流川のプレイに引っ張られるように、桜木のポテンシャルは開花していく。そういう意味で、桜木のライバルはやはり流川なのだろう。

 流川楓という天才に共感することは難しい。それでもやっぱり、天才と呼ばれるキャラクターの存在は胸を熱くする。太陽を見上げるように、眩しいけれど、それでも近づきたいと願わずにいられないから。

■満島エリオ
ライター。 音楽を中心に漫画、アニメ、小説等のエンタメ系記事を執筆。rockinon.comなどに寄稿。満島エリオ Twitter(@erio0129) 

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