人はなぜ同人活動をするのか? 『ドージン活動、はじめました!?』が伝える「好き」という気持ちの尊さ

人はなぜ同人活動をするのか? 『ドージン活動、はじめました!?』が伝える「好き」という気持ちの尊さ

 Twitterで「同人活動」をする女性の人間関係を描いた作品『私のジャンルに「神」がいます』(真田つづる)が大きな反響を呼び、先日、NHKの人気番組でも「同人作家」が特集された。

 中条亮の『ドージン活動、はじめました!?』(以下『ドー活!?』)はいち早く、そんな同人活動のリアルを描いた作品だ。

人はなぜ同人活動をするのか?

※本記事には一部作品のネタバレが含まれます

 漫画専門学生の遥斗は、同級生である秋山のプロデビューを知り、何も結果を出せていないことに焦る。一念発起し、卒業制作として描きあげた漫画を出版社に持ち込んだが、力作は軽くあしらわれ、編集者から「まずは同人活動からはじめてみたら?」と言われてしまう。遥斗は少しでもプロに近づくために漫画好きの双子の妹、美晴と同人活動をはじめることを決意。しかし、美晴のプロットは、少年漫画の男性キャラクター同士の恋愛を描いたBL(ボーイズラブ)物で……。

 同人の定義を一概に説明することは難しいが、ここでは自費で漫画や小説を出版することを指すとしよう。本作では中でも、BLの2次創作(既存の漫画、アニメ、ゲームなどの設定を元に創作すること)同人を取り上げている。

 そもそも人はなぜ同人活動をするのだろうか? 

 創作や原作の作品が好きだから同人活動をしている人々が大半だ。だが、遥斗のようにプロの漫画家を目指すために同人活動をするのも非現実的な話しではない。実力のある同人作家は定期的に作品を発表しているので経験値が高く、プロの世界でも重宝されるという。CLAMP、高河ゆん、よしながふみなどBLの2次創作同人からプロデビューした作家は数え切れない。作者の中条亮自身もプロ漫画家、同人作家として活躍中だ。

 いずれにせよ忙しい日々から時間を捻出して創作をし続けるのはかなり気合いのいる行為に違いはない。

 例えば、同人誌を出すにはとにかくやることが多い。同人誌を配布するイベントに申し込み、印刷所を予約して、原稿を完成させ、当日の買い物リストを作成し……これを多くの同人作家が仕事や学業をこなしながらやる。だからこそ原稿を完成させ、イベントに参加した時の達成感もひとしおだ。

 作中にこんなシーンがある。苦労して短期間で作品を仕上げ、初めて即売会に臨む遥斗。しかしイベントが開場してもすぐには本が売れない。すると、1人の参加者が立ち止まりパラパラとページをめくった後、本を購入した。初めて本が売れた遥斗は、受け取った500円玉の重さをじんと噛みしめる。それでも本が売れないこともあるし、売れても多くの同人サークルが赤字だ。パッションがなければ続かないだろう。

 他にも、印象的なのは、憧れの大手同人作家「おしり」にSNSで作品を褒められた美晴が感激のあまり涙を流すシーンだ。その後、実は「おしり」が漫画家デビューした同級生の秋山だと発覚する。

 作品を好きな作者に認められると本当に嬉しいものだ。そして自分が好きで創った物がこの世界の誰かにとって意味のあるものになっている。ーー同人活動をしているとそんな美しい可能性を信じられる瞬間が確かにあるのだ。同人を通した人間関係は趣味がきっかけでつながるので、本名や年齢を一切知らない相手と知り合える。立場や環境を超えて交友関係を築くのも楽しい。少しでも同人に触れた経験があれば、同人に関わっている時に感じる感情の高ぶりをここまでみずみずしく描いてくれるのかと感動するだろう。

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