日系人強制収容所で少年はどんな日々を過ごした? 『スタートレック』出演俳優が明かす〈敵〉と呼ばれた過去

アメリカで〈敵〉と呼ばれた日系人の人生

アメリカの民主主義は参加型の民主主義であり政治プロセスに積極的に関わる人民に依存している。

 そしてその人民は偉業を成すことができるとも。ジョージ・タケイの父が信じたのは国家ではなく、民主主義であり、それに関わる人々だった。

 民主主義とは参加することだ。抗議や批判、不満や訴えの声を上げることですぐに変化は訪れない。とても時間がかかるものが民主主義であるが、絶えず人々が声を上げていくこと、その政治プロセスこそが民主主義の最も大切なことなのだと本書は教えてくれる。

 『〈敵〉と呼ばれても』は戦時における国家的な人種隔離の体験談であるが、ジョージ・タケイの物語には差別や偏見の問題とともにアメリカ民主主義への深い問いが描かれているのだ。

 アメリカ大統領選挙、人種、肌の色、移民、ジェンダー、セクシャリティなどへの偏見と差別や、言論や行動の自由が脅かされている現在(ジョージ・タケイも2005年にゲイであることをカミングアウト)、まさに今読まれるべき本と言えよう。

■すずきたけし
ライター。ウェブマガジン『あさひてらす』で小説《16の書店主たちのはなし》。『偉人たちの温泉通信簿』挿画、『旅する本の雑誌』(本の雑誌社)『夢の本屋ガイド』(朝日出版)に寄稿。 元書店員。

■書籍情報
『〈敵〉と呼ばれても』
著者:ジョージ・タケイ
画:ハーモニー・ベッカー
訳:青柳伸子
出版社:作品社
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