“猫から目線”で見ると、我々の人生はどう映る? 猫写真家 × 作詞家コラボの「猫詩」を詠む
野良猫が幸せになれる動物愛護とは?
本書には野良猫目線な詩も多数綴られているため、命の見守り方も考えさせられる。
例えば、お腹を空かせた野良猫を見ると可哀想になり、ついご飯をあげたくなってしまうものだ。だが、継続できないその優しさは野良猫からしてみれば、優しさに写っていないかもしれない。
どこぞの野良を見つけたら 気まぐれにゴハンをくれるより すぐに忘れてしまえるほどの 侮蔑をこめて無視しておくれ あたしら勝手に生きるものに 期待をさせて楽しいかい 一度っきりの慈善より 知ったことかと立ち去っておくれ
行き場所がなくて飢えに苦しんでいる猫たちが本当に欲しいのは、気まぐれでもらえる缶詰ではなく、ずっと安心できる居場所と毎日のご飯。それをあげられないのならば、ひとつの命を幸せにすることは難しい。その厳しい事実とちゃんと向き合うことから、真の動物愛護は始まっていくと思う。貫けない優しさは動物を不幸してしまうのだということを、私たち人間はもっと自覚する必要がある。
ごめんね、うちでは飼えないのって あの子は泣きながら背を向ける いいんだよ気にしないで 優しさは充分に伝わってるよ 生き延びるか死んじゃうか それは私の運だもの 知ってるの、生半可に受け入れるよりも 背を向ける方が苦しいってことを
消えてしまいそうなひとつの命を前にした時、自分はどんな行動を取れるだろう。そんなことも考えたくなる本書は、命に対して責任を持つことの重さも知れる一冊。ひとりの人間としてどう生き、他の生命とどんな風に関わっていくか、ぜひ考えつつ、45篇の詩と写真を心に刻んでみてほしい。
■古川諭香
1990年生まれ。岐阜県出身。主にwebメディアで活動するフリーライター。「ダ・ヴィンチニュース」で書評を執筆。猫に関する記事を多く執筆しており、『バズにゃん』(KADOKAWA)を共著。
■書籍情報
『猫から目線』
詩:及川眠子
写真:沖昌之
出版社:ベストセラーズ
出版社サイト