『かいけつゾロリ』著者・原ゆたかが語る、悪役を主人公にしたワケ 「大人に気に入られるいい話を書こうとは思っていない」
子どもといっしょに読んでいる大人に向けて描くことが増えてきた
――30年以上描かれてきて『ゾロリ』の内容的な変化はご自身ではどう思われていますか?
原:私は子どもがお客さんだと思って本を書いてきたので、「『ゾロリ』はおならを出してるから人気だ」「オヤジギャグのおかけでしょ?」などと上っ面だけ読んだ大人から批判されても、なんとも思わなかったけれど、これだけ長く描いてくると、昔読者だった子どもたちが成長し、『ゾロリ』について理解してくれる大人も増えてきたので今日みたいにいろいろ話してもいいかなと思っています。
あなた(飯田一史)が「現代ビジネス」で書いてくれた(「なぜ『かいけつゾロリ』は「読書に興味ない子」を熱狂させ続けるのか」)に「『ゾロリ』ばかり読んでいてけしからん」じゃなくて「なぜ『ゾロリ』ばかりが読まれるのか」をちゃんと考えるべきだと書かれていたけど、そんな風に言ってくれた人はほとんどいないんです。
ゾロリを批判する人には、「では、あなたが読ませたい本の面白さを子どもたちに伝えようとしたのか」と問いたいんです。
――読まれない本を作る方がはるかに簡単で、みんなが読みたいと思う本を作るのはものすごく難しいのに、なぜか『ゾロリ』自体の分析をしないで「他のものをどう読ませようか」とか「自分が子どものころエンデを読んでいたのに最近の子どもはゾロリばかり」というような話ばかりなのが不自然に思ったんです。「プレジデント Family」でも東大生の8割が『かいけつゾロリ』を読んでいたという記事も印象的でした。
原:「どの巻から読んでも楽しいものを」というつもりで描いてきましたが、ゾロリを続けていくためにも、60巻目あたりから「これまで出てきたキャラクターとゾロリを再会させる物語」が描きたくなってきました。63巻で書いたのは第1作目『かいけつゾロリのドラゴンたいじ』の続編『かいけつゾロリのドラゴンたいじ2』で、30数年ぶりの続編です。悪の王者をめざしていたゾロリにそのときひどい目にあわせたおでんやさんに罪ほろぼしをさせたかったのです。
――原先生は「アニメ、マンガ、ゲームと同じ土俵に乗りたい」、「今日はゲームやろう」「今日は『ゾロリ』読もう」という選択肢のひとつとしてあってほしい、とずっとおっしゃっられてきました。
原:本はエンターテインメントの1つです。大人になっても実用書以外は、今日は勉強のために小説を読もう、なんて思ったことはありません。
大人は「お勉強」のために子どもたちに本を読ませようとします。強制的にすすめられ読まされる本が面白いでしょうか。よかれと思ってやっていることで、本が嫌いになる子どもが結構いることを大人には自覚してほしいと思います。
私はまず本も楽しいんだと子どもたちに思ってほしいんです。小学校時代の私に書いたゾロリが、30年以上読まれてきたということは、私は子どもらしいふつうの小学生だったという証明だと思います。
テレビアニメから『ゾロリ』に入る人へ向けて
――4月から始まった新しいテレビアニメ版から『ゾロリ』を知る子ども、また親もいると思います。本で読むならどの巻からがオススメですか。
原:前にも言ったように、どの巻から読んでも楽しめるように描いているつもりですが、できれば最初のほうから読み進めてもらえるとそれぞれのキャラクターにも愛着がわくと思います。新しいアニメは最近の作品が中心です。25分にまとめるためアレンジされているので原作ではどうだったのかを比べてもらうと新しい発見があるかもしれません。
アニメをきっかけに本を手にとってくれる子が増えればと期待しています。ゾロリはいつも失敗ばかりしますが、いつだって前向きです。私が子どもの頃、憧れた植木等さんや寅さんのように、読んでくれたこどもの人生を励ますような存在になれたら、嬉しいです。
■書籍情報『かいけつゾロリのレッドダイヤをさがせ!!』
作:原ゆたか
絵:原ゆたか
協力:原京子
価格:本体1,000円+税
出版社:ポプラ社
公式サイト