大学生がただしゃべりまくる漫画、なぜ大人気に? 田村由美『ミステリと言う勿れ』の新鮮な面白さ

『ミステリと言う勿れ』の新鮮な面白さ

 この作品を読めば読むほど、わかっていたはずのことがわからなくなっていく。正しいと信じていたことが「そうじゃないかもしれない」と足元を崩されるような気持ちになる。けれどきっと、「わからない」と感じることは「わかる」への第一歩だ。絵を描くのが好きだった少女が、自分が下手だと思ってやめてしまったという話を聞いて、整はこう言うのだ。

「自分が下手だってわかる時って目が肥えてきた時なんですよ 本当に下手な時って下手なのもわからない」「だから下手だと思った時こそ伸び時です」

 不可解なバスジャック、連続殺人、遺産争いなど、本作はミステリとしても十分な読みごたえがある。だが、タイトルが示す通り、ただのミステリからもう一歩踏み込んで、自分の中の「わからない」と向き合いたいと感じるようになったなら、この作品はより一層味わいを増してくるだろう。

■満島エリオ
ライター。 音楽を中心に漫画、アニメ、小説等のエンタメ系記事を執筆。rockinon.comなどに寄稿。満島エリオ Twitter(@erio0129

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