『ONE PIECE』ドレスローザ編には尾田栄一郎のすべてが詰まっている 複雑なストーリーの中にある作家性

『ONE PIECE』ドレスローザ編には尾田栄一郎のすべてが詰まっている 複雑なストーリーの中にある作家性

 ドレスローザ編は『ONE PIECE』の中でも複雑な話で、各キャラクターの動向を追っているだけで頭がこんがらがってくるのだが、作者がやりたかったことは明快である。

 ドレスローザ編は『ONE PIECE』の中に詰まっている全ての要素を圧縮した総集編かつ総決算とでも言うような展開となっているのだが、どこか尾田栄一郎自身による作品批評が漫画によって展開されているようにも感じられる。

 そう考えた時に一番面白いのはバトルの見せ方である。トーナメントバトルはジャンプで一番盛り上がる展開で、新キャラが続々と登場して派手な必殺技を使う姿はバトル漫画のセオリーを一応抑えているのだが、作者が見せたいものがバトルの面白さではないことが、読んでいてはっきりとわかる。

 やがて国内の剣闘士たちが、ドフラミンゴに逆らって捕まっている囚人だと明らかになる。囚人たちは100勝すれば開放されると言われているが、簡単には勝つことができず、戦いの中で見せしめのために処刑されてきたのだ。

 一方、街中を歩く生きたオモチャたちが、ドフラミンゴ配下の「ホビホビの実」の能力者・シュガーによって、オモチャに変えられた反逆者たちだったことも次第に明らかになる。この能力のエグい点は、オモチャに変えられた人間の記憶が、恋人や家族といった世界中の人々から消されてしまうこと。同時にオモチャにされた人間は、シュガーの命令に逆らうことができない。

 そんな中、一本足の兵隊のオモチャにされた男・キュロスが他のオモチャたちと反乱を企て、ルフィたち麦わらの一味と、昔からドレスローザで暮らしていたが今は工場でSMILE製造を強いられている小人のトンタッタ族が、共に力を合わせて革命を起こすという怒涛の展開へ繋がっていく。

 明るく楽しいジャンプバトルと、いくらでもグッズ展開が可能な(それこそオモチャやぬいぐるみのような)かわいいキャラクターで読者をひきつけながら、尾田栄一郎が常に描いてきたのは、虐げられた者たちが反旗を翻して戦う姿だ。それがすべて詰まった「ドレスローザ編」は、これぞ『ONE PIECE』という物語である。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■書籍情報
『ONE PIECE』既刊97巻
著者:尾田栄一郎
出版社:株式会社 集英社
https://one-piece.com/

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