2.5次元俳優・荒木宏文の名作フォトブック『History』に詰まった奥深い美学

荒木宏文の名作『History』を振り返る

 まだまだ2.5次元舞台が知名度を上げる前から活躍する、荒木宏文という2.5次元俳優がいる。「荒やん」の愛称で親しまれ、俳優集団D-BOYSの一員としても有名だ。

"出すなら、一般的な写真集にはしたくない"

荒木宏文フォトブック『History』Amazon限定版表紙

 2005年の『ミュージカル テニスの王子様』をきっかけに注目を集め、今や芸歴15年のカリスマ俳優である。2.5次元のみならず、地上波ドラマや戦隊モノにも出演。現在でも4〜5年先までスケジュールが埋まっている(!)そうで、その勢いはとどまることを知らない。

 彼は2020年1月に活動15周年を記念したフォトブック『History』(東京ニュース通信社)を発売した。今までにソロ写真集をいくつか出しているものの、新作は実に10年ぶり。ファン待望の、15周年の集大成と呼ぶべき一冊だ。

 作中のインタビューでも語っているが、荒木本人は写真集というジャンルに対し、あまり"得意な仕事"とは思っていない様子。アイドルになりたかったわけでなく、俳優業に専念したいことから、どこか納得のいかない気持ちを抱えていたようだ。包み隠さず、本音で赤裸々に語る彼からは、非常に素直なものを感じ、好感が持てる。

 "出すなら、一般的な写真集にはしたくない"。そんな思いが込められた本作は全てがセルフプロデュース。スタイリングなども担当し、写真集のテーマは「朝・昼・晩」。

 早速ページをめくるとそこには透き通る青い海、そして一人の男性の足元。一ページ目から顔を出さず、あえて足元だけ……というのも小技が効いている。朝の優雅な海岸の散歩をイメージしたショットがとても爽やかだ。大きなあくびや椅子にもたれかかり、伸びをするお茶目な一面も。

 海や花、植物などの自然に囲まれた「朝」は解放感に溢れ、どこか癒されるゆったりとした空間だ。よくある写真集なら朝はイケメンがベッドで眠り、バスローブを羽織ったドキドキのシチュエーションが多いだろう。

 しかし荒木はそんな「萌え」要素をわざと撤廃したと語った。確かに読者の多くはその「萌え」を求めるのだが、あえて触れないことで他の写真集との差別化が実現できる。

 また彼自身の持つこだわりを最優先にしたことから「荒木宏文のセカイ」を徹底的に創り出しているのだ。

 朝が終わると、次は昼。先ほどの爽やかなイメージとは少し変わって、活動的な荒木の姿が。髪を編み込みにし、スポーティーなファッションで街を練り歩く。王子様風のルックスにちょっぴりヤンキーらしいスタイルが、良い意味でのアンバランスさを醸し出していた。

 すっかり日が暮れると、朝と昼にはない"夜の顔"が現れ出す――。癒し、そしてやんちゃな顔の裏にはどんな表情が潜んでいるのか? ぜひ24時間を通しての荒木宏文を、この一冊で感じて頂きたい。

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