シニア猫と過ごす限りある時間を大切にーー『じじ猫くらし』が描く、愛おしい日々

これから先もずっと一緒。『じじ猫くらし』

 動物の感情など、本当のところはその動物自身にしか分からないものだ。いくら研究で心の仕組みが明らかになったとしても、それが本当に正しいのかは誰も証明できない。でも、一緒に暮らしていると、猫だって人間と同じように別れを悲しんだり、愛する人のそばに寄り添える喜びを感じているように思える瞬間が多々ある。人と猫の間にはたしかに絆や愛に近いものが存在するよう気がするのだ。

 だから、“ただここで寄り添い合える今”を、もっと大切にしていきたい。うちに猫がいるという幸せは当たり前ではなく、かけがえのない奇跡だ。いなくならないと、その幸せの価値に気づけないなんて悲しいし、後悔が残るから、生きていてくれるうちから猫と時を刻める日常の尊さに感謝したい。

 命の終わりが刻々と近づいてくるシニア期は複雑な気持ちになり、悩みも尽きないだろう。けれど、少しずつ老いていく愛猫の変化すらも大切に受け止めながら、この手で抱きしめられる時間を思いっきり大切にしていきたい。本書には、そう思わせてくれる温かさがあった。

 なお、ふじひと氏の愛猫は本作執筆中に誕生日を迎え、13歳になったそう。歳を重ねるたびに増えていく思い出とかけがえのない今日を2人がどう大切にしていくのか、これからも見守りつつ、自身の愛猫の老いも愛していきたい。

■古川諭香
1990年生まれ。岐阜県出身。主にwebメディアで活動するフリーライター。「ダ・ヴィンチニュース」で書評を執筆。猫に関する記事を多く執筆しており、『バズにゃん』(KADOKAWA)を共著。

■書籍情報
『じじ猫くらし』
著者:ふじひと
出版社:KADOKAWA
価格:本体1,100円+税
https://www.kadokawa.co.jp/product/322001000361/

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