シークエンスはやともが語る、ポップな心霊論「できれば心霊のことで笑ってほしい」
ポップな筆致の理由
――本書の中で、とくにオススメの話は?
はやとも:切ないんですけど、犬の話かなあ。本には書いていないんですけど、ラガーっていう飼っていた犬と二回目のお別れをしたとき、もうひとつ思ったことが実はあって。「他人を恨んだり妬んだりして死んでいくのは人間だけなんだな」と。火事で死んじゃったんですけど、犬からしたら偶発的に起こった火事だということもわからないし、家が燃え盛ったとき、みんな外に出ていたので家族がだれも助けに来てくれないという状況って、たぶん人間だったら恨むはずなんですよね。恨んで死んでいくはずなのに、引っ越し先で待っていてくれて、しばらく一緒にいてくれたことを考えたときに、人のことを悪く思って死んでいったり、恨みを残してさまよい続けたりするのは嫌だな思いました。自分がこれから生きていく上で、いろんなことをラガーに教えてもらった気がします。ある意味、見えてよかったなと思いましたね、珍しく。
――本書は幽霊が出てくる話の割にポップで明るい筆致ですが、そこは意識していましたか?
はやとも:できれば心霊のことで笑ってほしいんですよ。心霊の話はどうやっても怖いという人がいるんですが、本当は全然怖い話じゃない。例えば僕、彼女の家でお風呂に入ろうとしたら先に知らないおじいさんが入っていたとか、普通に面白いじゃないですか。平気で一番風呂を取られるとか、笑える話なのに、それでも怖いという人はいます。幽霊=怖いというイメージが根付いているのでしょうね。
でも、面白いときは笑ってほしいので、「ポップに書かせてください」とお願いしたら、連載のタイトルが「ポップな心霊論」になって、マユボンヌさんが素っ頓狂なイラストを描いてくださった。その結果、僕にTwitterのダイレクトメールを送ってくれる人たちの大半が、「おかげで幽霊が怖くなくなりました。でも、昔より幽霊を信じられるようになりました」という内容になったんです。僕にとって二重でおいしい感じになってきたのは、完全にこの連載のおかげです。
――心霊で笑ってもらえるようになったんですね。
はやとも:この間、『テッパンいただきます』という千鳥さんと華丸大吉さんの番組に呼んでいただいたときに、煽りVTRをディレクターさんが怖い感じに作って、登場したときも照明が暗くなったんですけど。千鳥の大悟さんがひと言、「この子、怖がらせる子ちゃうからな」って言ってくれたんですよ。それが本当にありがたくて。千鳥さんのおかげで照明も明るく戻って、ゲラゲラ笑える感じになったんですよね。お笑いの先輩たちや「ポップな心霊論」など、いろんな人たちのおかげで、楽しく明るく、お笑いの方向で心霊を語れるようになってきました。もともとの意図が叶い始めて、本当に良かったと思います。
■書籍情報
『ヤバい生き霊』
シークエンスはやとも 著
価格:本体1,200円+税
出版社:光文社
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