鈴木愛理、10代最後の写真集『泳がない夏』が名作たる理由 完璧な表情に漂う、当時の℃-uteの熱量
鈴木愛理と牧野真莉愛の計6タイトルの電子版写真集の配信が8月31日にスタートした。今回、電子化された名作揃いのラインナップで最も推したい作品がある。2013年8月に紙版が出版された鈴木愛理『泳がない夏』(ワニブックス)だ。
当時の℃-uteの状況
当時、℃-uteは2012年から13年にかけて行われた、今でもハロー!のファンの間で語り継がれる伝説のツアー『℃-uteコンサートツアー2012-2013冬 〜神聖なるペンタグラム〜』終了後、休む間も無く始まった『℃-uteコンサートツアー 2013春 〜トレジャーボックス〜』を経て、ライブパフォーマンス面ではまさに敵なしの状態だった。同年4月3日には念願だった日本武道館での公演が、9月10日の「℃-uteの日」に行われることが発表され(後に9月9日も追加され2daysとなった)、同時に初となるフランス・パリ公演も決定した。
グループとしても仕上がっていた時期に撮影、出版されたのが本作。電子版で久しぶりに見返したが、7年以上経った今でもまったく古くなっていないどころか、これから写真集をリリースするアイドルや若手女優はこれを参考にすべきだとさえ思う。完璧でまったく隙がない。「そりゃアイドルとして完璧な鈴木愛理の写真集なんだから、当たり前だろ」と思うかもしれないが、本作は鈴木がもともと持つポテンシャルに加えて、「上昇気流に乗っているアイドル」にしか出せない「熱量」を感じさせるのだ。加えて、そこにたどりつくまでの℃-uteの苦難の道のりを考えると、この時期の鈴木ならではの凄みと言えるだろう。
すべてが上向きだった時期の作品
本作は鈴木が高校を卒業したタイミングということもあり、これまで定番だった「制服姿」が収録されていない。加えて古都・函館で撮影されたこともあり、水着を着て砂浜ではしゃぐシーンなどはありつつも、どこか落ち着いた雰囲気が漂っている。おそらく長年にわたり鈴木の写真集を取り続けてきた、カメラマン西田幸樹と編者の間で、制服を纏っていた学生時代とは違う、「大人」としての魅力を引き出すことを意識していたのだろう。『泳がない夏』の通り、本書には海に入るシーンがない(足をつける程度のものはある)。鈴木が「泳げない」ことは周知の事実だが、そういうシーンが無いからこそ表現できるものもあるのかと関心した。
表紙から数ページめくると、『泳がない夏』というタイトルと見開きいっぱいで、どアップの鈴木の顔が。まさに非の打ち所がない、アイドルとして完璧であり、上り調子のアイドルにしかできない表情。このカットが収められているだけでも名作と言えるが、函館の街を颯爽と歩く姿はノスタルジックな思い出を共有している気持ちにさせるし、ログハウスでの部屋着姿は隙も感じさせ、洋館では上品な美しさまでもが表現されていて、毎ページに発見がある。