松重豊、小説&エッセイ集出版 「書くことが心のよりどころになりました」

俳優・松重豊、小説&エッセイ集出版

 俳優・松重豊の初となる小説&エッセイ集『空洞のなかみ』が、10月24日に毎日新聞出版より発売される。向井秀徳氏をはじめ11人のミュージシャンとの読み聴かせ朗読ムービーも制作される。

 『孤独のグルメ』『ヒキタさん!ご懐妊ですよ』『きょうの猫村さん』など、さまざまな映画・ドラマの演技で注目を集め続ける俳優・松重豊。書き下ろしとなる連作短編小説「愚者譫言(ぐしゃのうわごと)」と週刊誌『サンデー毎日』での連載エッセイ「演者戯言(えんじゃのざれごと)」の2作を収録した本書では、「演者」である松重だからこそ描くことができた心象風景を独自の軽妙洒脱な筆致で表現。『サンデー毎日』連載時から人気を呼んだ旭川在住のイラストレーター、あべみちこ氏による食べ物のイラストがエッセイに彩りを添えている。装丁は著者の熱烈なラブコールにより、菊地信義氏が担当している。

松重豊コメント

〈小説やエッセイを書いた理由〉
エッセイはもともと『サンデー毎日』で月に1回、連載していましたが、小説はまさにコロナ禍の真っ最中に外出を自粛しながら自宅にこもって一気に執筆しました。これまでの人生での経験の楽しかったこと、つらかったこと、傷ついたこと、理不尽な出来事などもすべて、自分を見つめながら書きました。自分の中にあった澱みたいなものが、堰を切ったように外に飛び出てきた感じです。コロナというのはいろんな人に対して、生き方を揺さぶっているんだと思います。なんとかしていい方向に向けなきゃと、皆さんも思っていたでしょう。僕としては、書くことが心のよりどころになりました。

〈タイトルの由来〉
40代を過ぎてから「自我や自意識は邪魔なものでしかない。空っぽの自分になるしかない」と自覚するようになりました。作中に弥勒菩薩が出てくるんですが、その菩薩自体が空洞の木像なんです。実は「空洞」が一番強い構造なんだそうです。空っぽの器に徹すると、俳優として役者をやるときに、それから人生を生きていくうえでもすごく楽になれるので、僕にとって「空洞」はどうしても避けられないテーマになんです。タイトルではその「空っぽの自分」を表現しました。

〈コロナ禍と執筆時期が重なったことについて〉
俳優っていうのは自分を空っぽにせざるを得ない職業なんで、それがコロナで、この先どうなるかわからない、空っぽがもっと空っぽになってしまったというときに、どんな極限的な空気が漂っているのかが小説にもちょいちょい出てきます。

〈人生に悩む人にとって、背中を押してくれる内容にもなっているが……〉
役者はある意味、わかりやすく「何々の役です」とはっきりと役が決まっているんですけれども、一般の方でも、たとえば「ああ、自分は医者だ」と思って医者をやっている人もいるでしょうし、「医者の役、やっちゃったな」っていう人もいるでしょう。「これ、俺には合わないな」とか、「この役、自分でどう演じればいいのかな?」って思っていらっしゃる方ってけっこう多いと思うんです。自分の「役」っていうのは「役割」という言葉にも置き換えられますし、果たして自分の役割になっているのか、そこに対してのアンチテーゼというか疑問符というか、あるんじゃないかと。自分くらいの年齢になってくると、「俺はもしかすると別の人生があったかもなあ」と夢想するわけじゃないですか。早期退職ということもあるでしょうし。そういう年代にも差し掛かってたんで、仕事や人生で悩んでいる人に、自分と置き換えていただけたらと思います。

松重豊 空洞のなかみ
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■スペシャルコラボムービー公開情報
松重豊自身のプロデュースによる、各短編毎11人のミュージシャンと共に送る、著者本人による読み聴かせ朗読ムービーをYouTubeにて公開予定。
10月3日より一週ごとに配信開始。第一回は向井秀徳氏とお届け。
松重豊公式サイトURL(9月1日現在、公開前)
https://mattige.com

■松重豊(まつしげ・ゆたか)プロフィール
俳優。1963年、福岡県に生まれる。蜷川スタジオを経て、映画、ドラマ、舞台と幅広く活躍。映画『しゃべれども しゃべれども』(2007年)で第62回毎日映画コンクール助演男優賞を受賞。2012年『孤独のグルメ』でドラマ初主演。2019年『ヒキタさん! ご懐妊ですよ』で映画初主演。2020年放送のミニドラマ『きょうの猫村さん』で猫村ねこを演じて話題に。「深夜の音楽食堂」(FMヨコハマ)では、ラジオ・パーソナリティーも務めている。

■書籍情報
『空洞のなかみ』
著者:松重豊
発行:毎日新聞出版
発売日:2020年10月24日
予価:本体1,500円(税別)
※書影制作中

小説「愚者譫言(ぐしゃのうわごと)」
京都へ撮影に出掛けた役者の「私」は、たった三行の台詞が出て来なくなり、廃業を考え始める。辿り着いたのは、ある寺。そこで麗しい国宝の弥勒菩薩と出会い、運命の歯車が動き始める。「私」は何を演じているのか? これからどう演じていくのか? ひたすら己と向き合う役者の葛藤を描ききった連作短編集12編。

エッセイ「演者戯言(えんじゃのざれごと)」
俳優・松重豊の日々の生活、修業時代のエピソード、食べ物にまつわる話などをテンポよく綴った25編のエッセイを収録。小説「愚者譫言」とのリンクも楽しむことができる。旭川在住のイラストレーター・あべみちこ氏による五感に響く精緻なイラストも必見。

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