『ハイキュー!!』”大砲”牛島若利 正統派エースが放つ言葉の威力

『ハイキュー!!』正統派エース・牛島若利

 バレーボールに青春をかける高校生たちを描く『ハイキュー!!』。今回ピックアップするのは白鳥沢学園のウィングスパイカー (WS)で全国三大エースのひとりである牛島若利だ。

 『ハイキュー!!』の数ある名勝負のうちで一試合選ぶとしたら? と聞かれたら烏野高校と白鳥沢学園の試合を挙げる人も多いのではないのだろうか。

 春高予選決勝。烏野高校の前に立ちはだかり、ギリギリの戦いを強いた白鳥沢学園。そんな強豪校を牽引するエースである牛島は寡黙で、他チームからは化け物か怪物かと恐れられているが、チームメイトからは「超バレー馬鹿」と評されている。そんな牛島若利の魅力に迫る。

他校から恐れられる王者白鳥沢と牛島の存在

ハイキュー!! 18巻
 チームとして本格的な登場がなかった頃からすでに、強すぎる敵として読者も認識していた白鳥沢学園。ついに白鳥沢学園のプレースタイルが明らかになったのは、春高予選決勝の烏野戦だった。

 軟打さえも強打となる牛若のほか、同じWSの五色は1年生ながらスタメンに入る有望格、大平は高いレシーブ技術を持ち、スパイクにもパワーがある。更には鋭い読みと直感を持つブロッカー天童、そして牛島の力を最大限に発揮させることに注力し、「目立たないセッター」に徹する白布。個々の力を足し算し、相手にぶつける。シンプルだが、ちょっとやそっとでは揺るがない強さを持っているからこそできるプレースタイルだ。そして、ここぞというときは牛若にトス。牛若の得点数はチームダントツだ。

 牛島の武器は“大砲”と言われる強打、だけではないところが対戦相手をより苦しめる。大きな特徴の一つがサウスポーだということ。牛島の最初のサーブの際、西谷が呟く、「出たな“左”」。右利きが多い中で練習していると、とっさに「対右利き」の動きをしてしまう。練習をしている量が多いほどそうだろう。

 牛若のサウスポーは、元バレーボール選手である父からのギフトだった。左利きは早めに矯正したほうがいいという義母の進言を退けたが、

「少しでも人と違うものを持っているというのはきっとこの子の力になるので…!」

 と矯正を拒否。まさに、それが牛島の力となっていた。両親は離婚しているが、父からバレーを教わり、左手を守ってもらった。牛島のルーツとして父親があるのは間違いなさそうだ。

実直な言葉は時に敵を作り、時に人を心酔させる

 牛島と日向たちの邂逅はコート上ではなく、ロードワーク中の牛島と会うという偶然だった。威風堂々という言葉がぴったりの牛若に対して、影山は臆することなく白鳥沢を偵察させてくれと言い出す。普通なら難色を示すところだが、牛若は動じない。

「見られることで俺達が弱くなることはない」

 自信がなければ言えないことだ。更には青葉城西高校のチームを「痩せた土地」とたとえ、日向を“怒らせた”。

「青城が“痩せた土地”なら おれ達はコンクリートか何かですかね??」

 気を放つ日向に一瞬驚きつつも牛若は真っ直ぐ受け止める。

「青葉城西に負け、県内の決勝にも残れない者が何を言ってもどうとも思えん」

 牛島は、思ったことをそのまま口にする。中でも日向に対しては特に辛辣だ。

「高さで勝負できないのに技術も稚拙でどうするんだ?」

 時には本人が目を背けている事実を残酷に告げてしまうこともある。しかし、逆もしかり。烏野戦終盤、ミスをした五色に対して牛島はこう声をかける。

「お前のその実力で何を焦ることがあるんだ」

 嘘もお世辞も言わない。そんな牛若だからこそ、たった一言で他の人に自信を持たせることができる。

 そんな牛若だが、実は同級生の前ではお茶目な一面を見せる場面もある。白鳥沢の寮。「今週のジャンプ返して」という天堂に対し「今まだ『ムダ毛スッキリスベスベ美肌』のところを読んでいる」という返し。大真面目である。天童は「広告より先にマンガ読んでヨ!!」と返しているので、こういったことが日常茶飯事なのだろう。完璧に見える牛若の隙がまた愛らしい。

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