生田絵梨花、22歳の写真集『インターミッション』が名作たる理由 その柔らかな奥行きを考察

生田絵梨花『インターミッション』評

 『インターミッション』は構成も秀逸だ。終盤では、星条旗のはためく五番街を和服で歩き、ニューヨーカーと歓談するシーンがある。これは若き日の黒柳徹子が撮った写真へのオマージュだという。撮影最終日のスタッフとの食事中に涙を見せている写真が挿入され、最後はブロードウェイで赤いスカートをはためかせる。アイドルとミュージカル女優というふたつの生田絵梨花のアイデンティティを強く意識した構成だ。

 そこには「型にはまりやすいタイプ」だったという彼女の影はない。現在、生田絵梨花はInstagramで、ときに悲しみを抱えて、ひとりの人間としての想いも綴る。2020年7月に放映された「シブヤノオト SPECIAL‐みんなでエール‐」で彼女が弾いたピアノの響きに感銘を受けた人も多いだろう。豊かな文化資本に恵まれた家庭で育った生田絵梨花の視線は、彼女が芸能界に入ったことによって、現在ではときに私たちの視線とも交差する。生田絵梨花という存在の持つ柔らかな奥行きを表現していた写真集が『インターミッション』だとも感じるのだ。

■宗像明将
1972年生まれ。「MUSIC MAGAZINE」「レコード・コレクターズ」などで、はっぴいえんど以降の日本のロックやポップス、ビーチ・ボーイズの流れをくむ欧米のロックやポップス、ワールドミュージックや民俗音楽について執筆する音楽評論家。近年は時流に押され、趣味の範囲にしておきたかったアイドルに関しての原稿執筆も多い。Twitter

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