『13歳からのアート思考』著者が語る、ゆたかなものの見方 「自分で見たり、考えたりすることこそがアート思考」
ゆたかな「ものの見方」は、失われやすいものだからこそ大切に
――読字に障害があるディスレクシアの方のなかには映像記憶が優れている方が多い、逆に言うと言葉、文字で世界を認識するようになると人は「犬」とか「葉」としてものを見ることはできても個別具体的な特徴を捉える力が失われやすい、と何かの本で読みましたが、通じる話な気がします。
末永:先ほどの話には続きがあって、お父さんは子どもにアート思考を伸ばしてほしい、でも奥さんはお受験をさせてちゃんとした将来を作ってあげたい、と考えているそうなんですね。ですから8歳の娘さんはお受験の勉強でモネのことを覚えたのかなと。4歳の子も塾に行きはじめていて、塾では皆と同じように脱いだものを畳んできちんと着替えるなどといった作業がなかなかできず、よく自信をなくして帰ってきて、お母さんは「うちの子はまたできない」と悩んでいる、と。私からすると、4歳の子がしているようなものの見方が8歳の子ではもう消えていることを考えると、ゆたかなものの見方は教育によってすぐ失われてしまうすごくもろいもので、だからこそ大切にしてほしいと思っています。
――お受験的な作法を身に付けるにしても、それを解除したアート思考への切り替えもできるようになるといいですよね。末永さんが今後していきたい活動があれば教えてください。
末永:この本は「体験型」にしたい、一方的なレクチャーにしたくないと思い、そういう工夫を盛り込みました。とはいえ本である以上、一部には読み飛ばしてしまう人もいるのかなと思います。でも実際に時間をかけて自分でやってみたり、考えたり見たりするのと、読み飛ばすのとでは、思考の深さや、自分の中に残る度合いが全然違います。
ですから大人向けの講座も含めて、実践的、体験的なものをやっていきたいですし、それから、また新たな授業を作っていけたらと思っています。そして新しい授業ができたら、また本にして多くの人に伝えられれば。
■書籍情報
『「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考』
末永幸歩 著
発行年月:2020年02月
定価:本体1,800円+税
出版社:ダイヤモンド社