伝説のヤクザが主夫道を極める『極主夫道』 『よつばと!』とも共通するおもしろさとは?

おもしろさのさじ加減が絶妙『極主夫道』
『よつばと!』(電撃コミックス)1巻

 それは、それぞれ愛すべきマイワールドの持ち主であることや、生い立ちと過去が謎のままなこと、ピュアで無敵な愛されキャラであることだ。また作品としての共通点もある。1話完結であること、主人公の世界観を中心とした日常を描いていること、登場人物に悪人が存在しないことなどだ。

 5歳の女の子のよつばと成人男性の龍、性別も年齢もまったく違うが、数ある日常漫画の中でもコメディのテイストが似ているように感じる。よつばは、”子どもだから”という理由では説明できないほど、ある意味漫画的に描かれており、現実にこんな5歳児はいない。龍も、任侠映画にでてくるような物語上のヤクザとして描かれている時点で、実際にはいるはずのないキャラクターである。

 実在しない2人に自分を反映する読者は非常に少ないはずだが、物語の背景や生活スタイルは細かく描写されリアリティがあり、読者の日常にとても近いものである。共感できる現実世界を2人のマイワールドを通して見ることで、読者が想像しない面白い出来事になり物語になっていくのだ。

 例えばスーパーでキャベツが一玉100円だった! それだけのことを、スーツに可愛いエプロン姿の龍が「アコギな商売しとりまんなぁ…」と呟くだけで面白い。それは『よつばと!』にも似た空気感がある。設定はまったく違う2作品だが、ハートフルコメディとして同じ面白さがあると感じた。

 ”ネクストブレイク”する作品として票を集めた『極主夫道』。その理由は『よつばと!』が大人気である理由と同じく、実在しそうでしない人間味のあるキャラクターの、個性的な日常茶飯事が描かれているところだ。読者の「あるある」と「ないない」のバランスが取れたところに笑いがある。そのセンスが抜群にある作品だ。

 現在も「くらげバンチ」にて無料連載中である。登場人物も増え、龍の過去も少しずつわかっていくのではないだろうか。龍とその仲間たちが奮闘するドタバタな日常を、これからもほのぼのと見守っていきたい。

■書籍情報
『極主夫道』(BUNCH COMICS)既刊5巻
著者:おおのこうすけ
出版社:株式会社 新潮社
https://www.shinchosha.co.jp/book/772104/

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