『ゴールデンカムイ』アシリパたちの前にヒグマ再び アイヌ知識がいっぱいの最新22巻

『ゴールデンカムイ』アイヌ文化における「神」とは?

 刺青人皮を集め、暗号を解けば金塊の在りかが発覚する――。それぞれが野望を胸に秘め、一歩も譲らぬ姿勢で争う『ゴールデンカムイ』(集英社)。21巻では鶴見中尉を前にしてアシリパは逃走。「私のことは私が決める」と力強く言い放つ姿に、もう少女の影は残っていなかった。

アイヌ文化における「神」とは?

※以下、ネタバレあり

『ゴールデンカムイ(21)』表紙

 大泊(おおどまり)港を突破し、樺太を脱する杉元一派。途中、杉元が負傷するトラブルこそあったものの、彼が命を落とすことはない。さすが不死身の杉元、と感心してしまう場面だ。第七師団から逃げ切った杉元・アシリパ・白石・ヴァシリ(通称:頭巾ちゃん)で、更なる茨の道を進んでいくこととなる。

 22巻では本作の名物である、読者の喜ぶアイヌ知識がいっぱい。現代の北海道では有名なクリオネも登場し、どう調理するの?とワクワクした人も多いことだろう。だがしかし、『アイヌ文化で読み解く「ゴールデンカムイ」』(集英社新書)にもあるように、彼らは何でもかんでも食べるわけではない。

 お馴染みのヒグマも久し振りに登場。ヒグマと言えば杉元とアシリパを引き合わせたきっかけとなったため、本作の象徴的な生物と言っても過言ではない。人に悪いことをするカムイ(神)はウェンカムイ(悪神・魔物)と呼び、彼らを食べること・毛皮を取ることはしない――アシリパが杉元にそう教えたのを覚えているだろうか? これはアイヌの思想に基づいた考えで、まずカムイが人間の世界「イウォロ」へ姿を現す際には、沢山の土産物を抱えてやってくる。例えば熊なら生活を豊かにしてくれる毛皮や、お腹を満たしてくれる肉のことを指す。

 本来ならカムイからの有難き土産を受け取るべきなのだが、悪事を働いた者から貰うことはできない。なぜならウェンカムイから受け取る行為は、彼らを正式な客人として迎え入れてしまったという事実になるからだ。

 極端な言い方をすれば、善人と悪人に対して同等の扱いを行うこととなる。それにより悪の魂がまた生まれ変わってしまわぬよう、「テイネポクナモシリ」という地獄へ送り、罰を与えばならない。そうではないヒグマに対しては作中でもあったように、とても丁寧に扱う。彼らは“客人”であるため、丁寧に扱うことで何度でも土産物をもたらしてくれる……という考えだ。簡単に言い換えれば悪人には罰を、善人には優しく、という至ってシンプルな対応の仕方である。

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