『ハイキュー!!』実現した「ゴミ捨て場の対決」 烏野の好敵手・音駒高校の魅力とは?
バレーボールに青春をかける高校生たちを描く『ハイキュー!!』。今回ピックアップするのは烏野高校のライバルである音駒高校。
音駒の猫又監督、烏野の鳥養監督が昔からのライバル同士でお互いに遠征に行くなど交流があり、烏と猫の対決、通称「ゴミ捨て場の対決」と言って、その二校の戦いを楽しみにしているファンもおおかった。
監督たちの引退で一時は疎遠になるが、猫又監督の復帰、烏野の顧問武田の交渉により、日向たちが入学した年の夏からその交流が復活した。
最初は、合宿で共に汗を流す仲間だった烏野と音駒だったが、次第に良きライバルとなっていく。烏野と音駒の関係性、そして音駒の魅力に迫る。
プレースタイルは「防御は最大の攻撃」
烏野が超攻撃型チームなのに対し、音駒は「つなぐ」をモットーとした守備力の高いチームだ。烏野は最初の練習試合では歯が立たず、完敗する。まだ新しいチームとしてスタートを切ったばかりの烏野に対し、キャプテンの黒尾(MB)を中心に完成度が高い音駒。
そんな音駒の要となるのがセッター・孤爪研磨だ。試合前の音駒が円陣を組んで叫ぶのはこんな言葉。
「俺達は血液だ。滞り無く流れろ。酸素を回せ。“脳”が正常に働くため」
この“脳”とは、セッターである研磨のことだ。冷静に相手チームを観察し、それに応じてチームを整え、守りを固め、攻撃に転じる。もちろん研磨がそれを実行できるのは、レシーバーが優れているからでもある。相手チームのスパイクをレシーブし、的確にセッターにボールを上げる。
バレーボールは、ボールがコートに落ちたら負けだ。どこへ打とうとも拾われることに、相手チームは次第に体力的にも精神的にも追い詰められていく。
もちろん、研磨が要だと分かっているからこそ、研磨を徹底的に攻める戦術を立ててくるチームもある。春高の2回戦で戦った早流川工業高校がそうだ。早流川は、「時間をかけて研磨を潰す」という策に出た。
もちろん、早い段階で音駒はその作戦に気がついており、「(策に)慣れてみせますよ」と黒尾が言えば、「過保護上等! セッターを動かさねえのが音駒品質だ」とリベロの夜久が言い切る。しかし、当の研磨は「ただのガマン比べはつまんないな」と言い、さらに策を仕掛けていく。
研磨はチームメイトがボールを上げてくれると信じているし、チームメイトたちは「研磨は(なんだかんだで)活路を開く」という強い信頼関係があるからこそできることだろう。
互いにとって最高の試合 春高3回戦「烏野VS音駒」
インターハイ前の練習試合、夏休みの東京合宿で幾度となく試合を重ねてきた烏野と音駒。しかし、春高での対戦はこれまでなかった。そんな烏野と音駒がついに春高で対戦を果たした歴史的な一戦。
烏野と音駒というチーム自体がライバルだが、メンバーそれぞれにも因縁ができていた。
MB月島の覚醒のきっかけを与えたのは黒尾だ。リベロの西谷と夜久は「互いが互いの師」。WSの山本は烏野のマネージャー清水に心惹かれたのをきっかけに、同じポジションの田中と友となり、ライバルとなった。そして、日向にとって生涯の友のひとりとなった研磨。
互いが互いを意識し、ギリギリのところで戦い続ける。だからこそ、それまで以上の力を引き出しあった。
研磨は日向を追い詰め、その羽をもぎとろうとする。そんなバレーを影山は「きゅうくつなバレーだ」と一喝し日向の前にそびえる壁を切り開く。というように、研磨が追い詰めれば、日向と影山は新たな道を切り開く。音駒が追い詰めれば、烏野は新たな武器を手に入れる。しかし、音駒もそのままやられたりなどはしない。研磨は「まだ死なないでよ」と、日向を、烏野をさらに追い詰めていく。
コートを挟んで、バレーで会話をしているというのだろうか。試合終盤、第37巻の323話と324話はセリフが最低限しかなく息つく間がない。見開きを使い、プレーをしっかりと見せている。平面なのに、プレーが立体的に見え、腕、手にボールが触れる音が聞こえてきそうな気さえする。そして、キャラクターと心が重なる。
「いつまでも、この試合が終わってほしくない」と強く思った。