腐女子が開催する“恋人がいそうなクリスマス選手権”とは? 『まるごと 腐女子のつづ井さん』の爆笑必至エピソード
オカザキさんの発案で開催されることになった「恋人がいそうなクリスマス選手権」。彼氏にもらったプレゼントを自慢し合うという企画である。いうまでもなく彼は架空の存在。みんな架空の彼氏と自分のストーリーや設定を練りに練ってくる。もう、この企画自体が爆笑だが、各人のプレゼンに腹がよじれる。いや、本を読んでいて、こんなに笑ったのは久しぶりだ。
おっと、この調子でエピソードを並べているときりがない。つづ井さんと愉快な仲間たちは、ズブズブの腐女子でありオタクだが、いつでも楽しそうである。それは自分の好きなことに全力投球だからだ。よくオタクには、自分の好きな作品を褒めるのに、他の作品をけなすという手法を取る人がいるが、彼女たちはそんなことをしない。ただひたすら、自分の好きを深めるだけである。また、他人の趣味嗜好にも口出ししない。生きていれば嫌なこともある。いろいろなしがらみも存在する。だけどそれに捉われている暇はない。好きなことをやっているだけで、毎日が飛ぶように過ぎていく。だから、つづ井さんの人生は楽しいのだ。
なんであれ“好き”なものを持っている人は強い。現実に不満を抱く人は、つづ井さんの日常から、いろいろな気づきを得られるはずだ。どうせならば、つづ井さんと愉快な仲間のように、毎日を楽しく過ごしたいものである。
■細谷正充
1963年、埼玉県生まれ。文芸評論家。歴史時代小説、ミステリーなどのエンターテインメント作品を中心に、書評、解説を数多く執筆している。アンソロジーの編者としての著書も多い。主な編著書に『歴史・時代小説の快楽 読まなきゃ死ねない全100作ガイド』『井伊の赤備え 徳川四天王筆頭史譚』『名刀伝』『名刀伝(二)』『名城伝』などがある。
■書籍情報
『まるごと 腐女子のつづ井さん』(文春文庫)
著者:つづ井
出版社:株式会社 文藝春秋
定価:本体900円+税
https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167915001