迷子猫を探すために必要な視点とは? “ペット探偵”が打ち明ける7つの捜索劇
誘拐や災害からペットを守るには……?
正直、ペットが行方不明になるのは飼い主の注意不足だと思っている方もいるだろう。しかし、全7つの捜索記録を知ると、その考えが変わる。迷子探しのプロが目撃したペットと人間をめぐる物語はどれも小説よりも奇なりで、ペットが行方不明になる理由には、人間の心の闇も関係していることに気づかされる。
そのひとつが、なかなか明るみになりにくい「ペット誘拐」。行方不明になったと思っていたら隣人による誘拐だった……という作中の衝撃的なエピソードは、ペットの守り方や近隣住民との付き合い方を問いかけており、我が家は大丈夫だろうかと考えたくなる。
また、本書には東日本大震災後のエピソードも記されているからこそ、防犯だけでなく、ペットを守るための防災も必要だと改めて思わされた。ペットとの「同行避難」や「同伴避難」にはまだまだたくさんの問題点があるからこそ、藤原さんが教えてくれる防災法を心に記憶しつつ、今日からできる防災法も考えてみたくなる。
ひとつだけ「絶対にしない」と決めていることがあります。それは「なぜ逃がしてしまったんですか」と依頼者を責めることです。
そんな優しいモットーを貫きながら、全国各地の行方不明になったペットを探し続ける藤原氏は、世の飼い主の救世主となっている。これからも藤原氏の活躍で1組でも多くの飼い主さんとペットが再会できることを願いながら、自分にできるペットの守り方も考えてみたくなった。
■古川諭香
1990年生まれ。岐阜県出身。主にwebメディアで活動するフリーライター。「ダ・ヴィンチニュース」で書評を執筆。猫に関する記事を多く執筆しており、『バズにゃん』(KADOKAWA)を共著。
■書籍情報
『210日ぶりに帰ってきた奇跡のネコ ペット探偵の奮闘記』 (新潮新書)
著者:藤原博史
出版社:株式会社 新潮社
価格:792円(税込)
https://www.shinchosha.co.jp/book/610850/