猫たちの柄の“塗り直し”で悩みを解決? 『猫塗り屋』が教えてくれる大切なこと

『猫塗り屋』が教えてくれる大切なこと
『ブラック企業の社員が猫になって人生が変わった話 モフ田くんの場合』(KADOKAWA)

 その毛柄で生まれてきてくれて、ありがとう。『猫塗り屋』(KADOKAWA)を読んだ後、思わず愛猫にそんな言葉を贈りたくなった。

 本作は『ブラック企業の社員が猫になって人生が変わった話 モフ田くんの場合』(KADOKAWA)の作者・清水めりぃの新作。猫の柄を塗りなおす「猫塗り屋」を舞台に、ユーモアと優しさが混ざり合ったストーリーが繰り広げられる。

柄を塗り替え、猫の心を救う「猫塗り屋」

 「猫塗り屋」は悩みを抱え、新しい自分に生まれ変わりたいと願う猫たちの心を救う職業。日本一の猫塗り屋のもとで修業をし、独立した歌国白妙は短期間だけ被毛の色を変えられる「一日絵具」や「一カ月絵具」を使い、猫たちの毛柄を変えることで苦しみを解決する。

 白妙のもとに訪れる猫の苦悩は、様々だ。恋を叶えるためにペルシャになりたいと願う短毛猫や希少価値があるため人間から追いかけられ続けているオスの三毛猫など、十人十色な悩みは人間にも通ずるものがあり、心動かされる。

 中でも特に印象的だったのが、誰かに愛される柄に塗ってほしいと言う猫のエピソード。まるで般若のような顔と柄のせいで貰い手が見つからず捨てられたその猫は野良になってもいじめられ、怖がられる生活を送っていた。いっそのこと、消えてしまいたい。そう願い続けていると体が透明に。これで誰にもいじめられずにすむ。……でも、一度でいいから誰かに愛されたい。そんな思いから、猫塗り屋に足を運んだのだ。

いつか死ぬ直前には『あのときだけは幸せだった』と そう思える一瞬がほしいのです…

 心の叫びを聞いた白妙は色を塗った後、透明猫を顔なじみの「ほぐし屋」へ連れて行き、店主のおばあさんと会わせる。前々から猫を飼いたがっていたおばあさんは透明猫をかわいいと言い、「家族になってほしい」と頼む。生まれて初めてかけられた優しい言葉に透明猫は涙して喜ぶが、同時に葛藤する。かわいいと言って貰えた今の柄は、一時的なもの。本当の自分の顔は恐ろしく、愛してもらえるものじゃない。でも、偽って一緒に暮らすなんて失礼なことはできない。

 複雑な感情を透明猫は涙ながらに吐露。すると、おばあさんは温かい言葉で傷だらけの心を包み込んだ。

あなたの般若顔 とても好きよ?個性的でかわいいもの

 実は白妙は、あえて元の柄に近いであろう般若のような柄を描くことで透明猫を見えるようにし、愛してくれる“誰か”も見つけて願いを叶えようと考えていたのだ。

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