『映像研には手を出すな!』金森氏は“アニメ制作のリアル”を伝える 有能なディレクターの役割

『映像研』ディレクター金森氏の役割

モノづくりの現実味を表す存在

 金森氏は映像研という会社にとって欠かすことのできない存在である。会社を運営するにはお金がいる。アニメを作るにはお金がいる。そこをカバーしているのがディレクターである金森氏。資金繰りという一見アニメ作りに関係なさそうにみえる行為をもって、アニメ作りを補佐している。この金森氏の存在が、映像研という作品を我々読者にとってぐっとリアリティのある作品へと引き上げてくれている。

 部活動がメインとなる漫画において、資金繰りについて触れている作品はほとんどない。触れたとしたも、「みんなでバイトをしてあの楽器を買おう!」とか「海の家のお手伝いをして部費を増やそう!」といった一時的なものである。

 一方の金森氏は、作品を作る度に金策をしている。資金繰りが1回限りではなく、それこそまるで会社の様に新たなアニメ(事業)のために資金繰りをし続けているのである。

 そしてそこには大勢の人が関わっている。教師・生徒会・SNS上の人・本屋さんなど様々な人と関わることによって金森氏は映像研に資金を供給し続けている。映像研(社内)でクリエイター二人が作品を作っている間、止まることなく外部と関わり資金を回し続ける。まるで会社活動そのものだ。

 情熱だけでは、才能だけでは、作品を生み出し続けることはできない。金森氏を通して、筆者からそう教えられているように感じられる。

 監督、アニメーター、プロデューサーとアニメに対する接し方が三者三様な三人組。彼女たちは才能も熱意もまったく違ったものを持っている。その三人が「アニメを作る」という目的のために集った映像研。これはまさに会社の疑似体験とも言える組織だ。その組織に求めるものすら違う三人が、これからどのような作品を作りどのように事業を発展させていくのか。最後まで目を離すことのできない作品である。

■水城みかん(みずき みかん)
経理・フィットネス・Amazon系を中心に各種Webメディアにて執筆。趣味は漫画・アニメ。AlexaとVODに依存したひきこもり生活を満喫中。

■書籍情報
『映像研には手を出すな!5』
大童澄瞳 著
価格:本体552円+税
出版社:小学館
公式サイト

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