『おしりたんてい』は“幼児でも楽しめるミステリー” 担当編集者が語る、大ヒットキャラの誕生秘話

『おしりたんてい』は“幼児でも楽しめるミステリー” 担当編集者が語る、大ヒットキャラの誕生秘話

世界から見た『おしりたんてい』

――髙林さんは世界最大の児童書の見本市であるボローニャブックフェアに毎年行かれているそうですが、海外のヒット作品と『おしりたんてい』に共通している点は何かあると思いますか?

髙林:説明不要なビジュアルの強さでしょうね。タイプは違いますが、たとえば『はらぺこあおむし』だって一度見たら忘れないですよね。『おしりたんてい』は今「日本で売れている本」として海外でも認知されています。日本のコンテンツは海外の人にまず覚えてもらうのが大変なんですが、『おしりたんてい』は見た目と名前を認知してもらっている。中身を読んだことなくても「顔がおしりのかたちをしたキャラクターが登場する探偵もの」と伝わるのは強みですね。普通は「この作品はこういうもので……」という前段階からすべて説明しないといけないのが、『おしりたんてい』に関しては「うちの国でいけると思うか?」だけ聞かれる。このビジュアルですからびっくりする方も少なくないですが、一度見たら必ず何かしらのリアクションをされるのはすごい。


――逆に『おしりたんてい』にしかないものはなんだと思いますか?

髙林:ひとつは「何度でも読み返しできる絵本」だということ。トロルさんは1冊のなかに主線のストーリーだけでなくサブキャラのストーリーをそれぞれ何層にも重ねて作っています。主線に絡まなくても毎巻ずっと選挙活動をしているさるちえおがいたり、子どもにボールをぶつけられて怒っているゴリかわげんこつがいたりする。対象年齢が低い絵本ではそういう世界観の作り方を普通はあまりやりません。『おしりたんてい』も「読んでいて気づいたら楽しい」くらいのつもりでやっていたんですが、子どもたちは鋭いので気づくんですね。

 もうひとつは「幼児でも楽しめるミステリー」であること。3歳の子でも楽しめるミステリーはなかなかありません。殺伐とした事件、「虚栄心」のように子どもに理解が難しい動機は避けるように気を遣っています。殺人を扱わない、単純な動機で事件を考える、といった振り幅が狭いなかで作っていくのは難しいのですが、同時に「大人が読んでもおもしろい」と思ってもらえることも追い続け、お母さんがたからも「ミステリーとして楽しんでいます」という声をいただいています。トロルさんは「子どもたちを楽しませる」というよりは「自分たちがおもしろいと思うものを真剣につくる。それが通用すればいい」というスタンスです。「子ども向けだからここまで」という感じで創作に臨んでいません。それが幅広い層に受けている理由なのかなと思います。

――『おしりたんてい』の海外進出の可能性は?

髙林:韓国・台湾ではすでに人気です。また、ヨーロッパでもフランス、スペイン、チェコ、フィンランドなどで出版されています。ちなみに「おしりたんてい」という名前はその言語に直訳する場合もあれば「ポポタン」「ペプネン」といったおもしろい音感のものにする場合もあります。英語圏ではまだこれからといった感じの反応ですが、興味は持ってもらえているので現在試行錯誤中です。「見た目はおしりですが上品です」と伝えても国によって受け取り方は違いますし、「おしり」の表現ひとつとっても各言語でどの単語を選ぶかによってニュアンスがだいぶ違うというおもしろさはあります。

――日本語でだって「おしりたんてい」と「ケツたんてい」ではだいぶ印象が違いますものね。英語でも「おしり」をどう呼ぶかはいろいろでしょうし。

髙林:ただ総じて海外からのオファーには「おもしろいからやってみよう!」という熱意を感じます。普通の絵本と違ってこういう変わり種を会社で通してやろうという場合には情熱と理解がないとできませんから。意外と北欧での反応もよく、フィンランドでは2巻目も出ています。書店で『ムーミン』と並んだらどう受け取られるんだろう、でも著者名がトロルだから受け入れてくれるか親しみやすかったりするのかな? と思ったり(笑)。

広がるおしりの世界

――国内でもおしりたんていの父ダンディのスピンオフマンガの連載が集英社のマンガ誌「最強ジャンプ」で春から始まり、アニメ化、映画化、書店での謎解きイベントに続いて2019年末にはお台場ヴィーナスフォートに「おしりたんてい ププッとストア」を開店といろいろ展開があるようですが。

髙林:そうですね、おしりたんていの可能性をさまざまなかたちで追求していきたいと思っています。コミック化もお話はたくさんいただいたのですが、まず若き日のおしりダンディを描いた『おしりダンディ ザ・ヤング』が4月2日売りの「最強ジャンプ」で始まることになりました。ゆくゆくはたとえばおしりたんていのライバルであるかいとうUがメインの話をやることもあるかもしれません。

 また、アニメから入ったファンに‘本’を手に取ってもらうために、アニメオリジナルのストーリーをコミック化した新シリーズ「アニメコミックおしりたんてい」を昨年秋にたちあげました。

   ほかにもミュージカルが4月に控えていますし、謎解きイベントも今後はもうちょっとハイグレードなものもつくりたいと思っています。やはり体験型のエンターテインメントは子どもたちにも人気ですので、『おしりたんてい』の世界を本以外でも体験してもらう、おしりたんていがひょっとしたらこの世界にいるかもと思ってもらえるように、多面的にやっていければと考えています。

■書籍情報
『アニメコミックおしりたんてい3 ププッ ワナだらけのジャングル』
トロル 著
発売日:3月13日(金)発売 ※地域によって異なります
価格:900円+税
出版社:ポプラ社
公式サイト
内容:
アニメオリジナルストーリーを収録した、おしりたんていアニメコミックシリーズ第3巻! まだ本でおしりたんていを読んだことのない人にもおすすめの、推理あり、笑いありのストーリーです。おしりたんていの父親、おしりダンディも登場する「ププッ ワナだらけのジャングル」と、「ププッ かばんをとりもどせ」の2話を収録。

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