『チェンソーマン』5巻、壮絶な戦闘描写で捧げる“B級ホラー映画”へのオマージュ
おそらくデンジがチェンソーの悪魔と同化して戦うのはホラー映画『悪魔のいけにえ』に登場する殺人鬼・レザーフェイスの武器からの引用だろう。同時に竜巻によって飛来するサメの襲撃に対し、チェンソーを武器に戦う男・フィンの姿を描いた『シャークネード』シリーズからの影響も伺える。このあたりはサメの魔人がデンジのことを大好きだという友好関係からも明らかだろう。
一方で感じるのは韓国映画の影響。マキマの呪術場面には韓国のホラー映画『哭声/コクソン』の影響が伺えるが、節々で、ホラー、アクション系の韓国映画テイストを感じる。実写化するなら、『パラサイト 半地下の家族』のポン・ジュノがNetflixでドラマ化したら面白いかもしれないが、低予算で強引に作る方が本作にはふさわしいのかもしれない。
前作『ファイアパンチ』の頃から、映画は藤本にとって重要なモチーフだ。第5巻ではマキマとデンジがデートで、一日中、映画館をハシゴする姿が描かる。面白さがわからず「映画とかわかんないのかも」というデンジに対し、マキマは「私も十本に一本くらいしか面白い映画には出会えないよ」「でもその一本に人生を変えられた事があるんだ」と言う。きっと名作だけでなく、B級、Z級の映画が「大好き!」だからこそ、こういう雑多で奥行きのある世界が描けるのだろう。
■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。
■漫画情報
『チェンソーマン』5巻
藤本タツキ 著
価格:¥484
出版社:集英社
集英社公式サイト:https://www.shonenjump.com/j/rensai/chainsaw.html