最強論客スコット・ギャロウェイが提示する、GAFA時代の人生論 ジェイ・コウガミがポイントを解説

スコット・ギャロウェイが提示する人生論

 Google、Apple、Facebook、Amazonの4社、いわゆるGAFAが世界をどのように創り変えたのかを解説したベストセラー『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』(東洋経済新報社)の著者であるスコット・ギャロウェイが、新たにGAFA時代の生き方を指南する書籍『ニューヨーク大学人気講義 HAPPINESS(ハピネス): GAFA時代の人生戦略』(東洋経済新報社)を刊行している。自身がニューヨーク大学で行なっている講義の中でも、最後の3時間で扱う「アルジェブラ・オブ・ハピネス(幸福の計算式)」を、詳細に解説した一冊だ。

 昨年末、大きな話題となった「WeWork問題」をいち早く予言したことでも知られるスコット・ギャロウェイとはどんな人物で、『GAFA時代の人生戦略』ではどんなメッセージを伝えようとしているのか。海外テック業界に詳しいジャーナリストのジェイ・コウガミ氏に訊いた。

「スコット氏は、ニューヨーク大学の大学院で有名なマーケティングの教授で、これまでに9つのスタートアップを立ち上げて売却してきたシリアルアントレプレナー(連続起業家)でもあります。現在はL2という市場調査をする会社の会長を務めています。有名になったきっかけは『Section4』や『Gartner L2』といったYouTubeチャンネルで、スコット・ギャロウェイはオピニオンリーダーとしてテック企業への批評を行ってきました。特に人気だったのは『Winners & Losers』というシリーズ。勝者となった企業と敗者となった企業をあげて、それぞれどんな要因で勝敗が決したのかを解説するものです。株価やメディアの露出だけではわかりにくい、その企業の本質的な価値を的確に指摘する舌鋒鋭さが、テック企業ウォッチャーたちの支持を集めました」

 そんなスコット・ギャロウェイは、GAFAに対して「分社化すべき」との主張をしているという。

「スコット氏は愛国者で資本主義者ですが、単に資本主義を推し進めるのではなく、GAFAのような大企業は分社化する必要があるとの主張を掲げています。現在のパワーバランスでは、GAFAが先に世の中のルールを決めて、それを追う形で政府や行政が動くようになっており、一部の人だけが富を得られる仕組みになっている。つまりテック企業が人々を不健康にしているというのです。GAFAが分社化してミドルクラスの所得が増えれば、教育や医療や保険にお金が回りやすくなり、社会はもっと健全化するはずだというのが彼の持論で、そのためのレギュレーションーー行政や機関が企業を監督するような仕組みを作るのが大切だと述べています」

 スコット・ギャロウェイの持つ視点は、日本にも必要だとジェイ氏は続ける。

「日本とアメリカでは市場が違いますが、テック企業やテクノロジーが社会や人々に与える影響力に対してもっとシビアな視点を持つことは必要でしょう。スコット氏のような人物がGAFAの危険性を指摘したことに加えて、欧米社会ではテック企業への警戒心が高まっています。特にスコット氏は、日本では未だに評価の高いソフトバンク・ビジョン・ファンドのWeWorkでの大失敗を早くから予測してきた、数少ない批評家です。ソフトバンクの危うい投資のやり方は、世界中で同じようなサービスを行っている複数の企業に巨額の資金を短期間で投資し、その企業価値を実際以上に高くして、ライバル企業よりも安くサービスを提供させ競争相手を潰すというもの。そうなると、企業に短期間で人材や新規顧客、メディアの注目ばかりは集まりますが、未成熟なサービスの企業価値を上げてきただけなので、実際の価値に見合った投資の回収や企業の成長が見込めるわけがないんです。スコット氏は、今回のソフトバンク・ビジョン・ファンドの失敗を、全てのビジネススクールが研究すべき世紀の失敗例だとさえ主張しています」

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