BRAHMAN、結成30周年の旅の果て 疾風怒濤、全身全霊――ただ“今”だけを燃焼し、問いかけ続けたツアー最終公演

疾風怒濤、全28曲。オープニングから27曲は間髪入れず演奏される。その後、TOSHI-LOW(Vo)の長いMCがあり、「順風満帆」で終わったが、時計を見たらまだ1時間50分弱しかたっていなかった。一瞬たりとも緩むことなく続く緊張感、吹き上がるエネルギー、駆け抜けるスピード感。恐るべき体力と集中力の持続である。2024年11月に行われた4時間にもおよぶライブ『BRAHMAN 六梵全書 Six full albums of all songs』の時も同じことを書いたが、今回もまた、「恐れ入った。恐れ入りました」と言うしかない(※1)。
1年以上にもわたって全国47都道府県で繰り広げられた『BRAHMAN tour viraha』の最終公演であり、『六梵全書』に始まり、アルバム『viraha』のリリース、ツアー、『BRAHMAN 30th Anniversary 「尽未来祭 2025」』と続いたBRAHMAN結成30周年の締めくくりとなったこの日。過去も未来もなく、ただ現在だけを燃焼し尽くす彼ららしいライブだったが、『viraha』の大きなテーマだった死生観のようなものが色濃く滲んで、いつになくエモーショナルな、そして心優しいパフォーマンスだった。とりわけ“俺はまだまだここでやることありすぎるから生きるしかない”と歌われるYUSUKE CHIBA - SNAKE ON THE BEACH -の「星の少年」のカバーから、〈さよならも言わずに消えた 最後の少年〉〈君の昨日を少しだけ置いていってよ〉と歌う「最後の少年」へと連なる流れは会場中が大合唱となり、この日のハイライトだった。

そしてラスト前の長いMCは、先に旅立っていった仲間たちへの惜別の情がペーソスとユーモアを交えながら語られる。「俺の人生の最後の日は、そのゴールのテープの向こう側に、先にいった、あの人も、あいつも、全員並んでてくれる。テープを切った後にそいつらが寄ってくる。『俺たちがいなくなった後の人生は、どうだった?』 その時、俺はこう言うよ、『順風満帆』!」というTOSHI-LOWの語りは、とりわけ感動的だった。オレもどんな人生を送ったとしても、最後は笑って「最高だったぜ」と親指を立てて逝きたい、と、そう思わずにはいられない説得力があった。そう、平たく言えば泣けましたよ。TOSHI-LOWの言葉に。歌に。BRAHMANの渾身の演奏に。生きるとはこういうことなのだ。


ほとんど映像の助けを借りることなく4人の躍動する肉体の存在感だけを際立たせていた『六梵全書』とは対照的に、映像や照明での演出も目立ったが、「最終章」「鼎の問」での被災地の現状や当時の原発作業員たちの実態を伝えるメッセージ色濃いMV映像は(過去のライブでも繰り返し流されてはいたが)、やはりBRAHMANならではのものだし、彼らのなかでそのリアルは少しも風化していないのだと思わされる。いつもたやすく壊れてしまう平凡な生活のありがたさと、我々の平穏な日常を守ってくれる人たちへの眼差しは、自分より弱い人たちを知ることで生まれてきたものだろう。


あえて喋らなかっただけで、反戦/反核の思いはずっと変わらないんだ、とTOSHI-LOWは言う。だが不可抗力の天災と、行政の不手際による人災によって深く傷ついた人たちを知って、若い頃には見えなかった景色も、知ろうとも思わなかった心も見えてきた。だから大事なのは、最悪な政治や社会への怒りを、傷ついた人たちの苦しみを、愛する人を失った悲しみを、内に秘めるのではなく口に出すこと、決して忘れないこと。TOSHI-LOWは「ここまでやってこられてひとつ言えることは、俺がとても運が良い」と言っていたが、運というよりも、先に倒れてしまった人たちに生かされているのだと思う。若いころは短期間で走り抜け燃えつきるように駆け抜け終わりたいと願っていた彼らは、過去から逃げず、曖昧な未来への希望にすがることもなく、ただ“今”を生きるために、精一杯歌い、叫び、演奏している。彼らはいつも「オレはこうだ、お前はどうなんだ」と全身全霊で問いかけてくる。ただライブで歌って暴れてああ楽しかった、で終わらせてくれない。だから余韻がある。いつまでも消えない熱がある。

彼らは決して器用なミュージシャンではない。この日TOSHI-LOWが言ったように、天才でもない。ギター、ベース、ドラムス、ボーカルというベーシックなロックバンドスタイルに執着し、時流に合わせて変化していく小器用さもない。だがその結果、ちょっとやそっとでは揺るがない強靱な個性を手に入れた。その強みがとことん活かされたライブでもあった。こんな奇妙な音を出すバンドは世界中どこにもいない。
今回のツアーは全公演、公演地にゆかりのあるバンドとの対バンだったが、この日は単独公演。茂木洋晃(G-FREAK FACTORY)や細美武士(ELLEGARDEN/the HIATUS/MONOEYES/the LOW-ATUS)の飛び入りはサプライズに近いものだったようだが、全体のハードな流れは途切れない。
何度か見た東京ガーデンシアターのライブ中、間違いなく最大音量だったが、すっきりとクリアで聴きやすい音響も申し分なかった。スタンド席から見たフロアの過熱ぶりも楽しかった。いちばんいい夜は今夜だったよ、間違いなく。
※1:https://rollingstonejapan.com/articles/detail/41864
























