BRAHMAN、UNISON SQUARE GARDEN、ハンブレッダーズ、Blue Mash......ライブの登場SEから紐解くバンドの個性

 ライブにおける登場SEは単なるBGMではなく、そのアーティスト/バンドの個性や世界観を瞬時に伝える重要な役割を持っている。会場にその音が響いた瞬間、空気が変わり、観客の期待と興奮が最高潮に達することも多い。そこで、この記事ではいくつかのバンドの登場SEをピックアップしてみたい。

BRAHMAN(ブルガリア民謡「Molih ta, majcho i molih」)

 BRAHMANの登場SEは、ブルガリア民謡「Molih ta, majcho i molih」。個人的に最も好きな登場SEのひとつだ。この楽曲が流れると、荘厳かつ神聖な空気が充満し、両手を頭上に掲げてあわせてメンバーの登場を待つファンの姿が散見されて、空気が一変する。ここからライブが始まれば、間髪入れずに楽曲を繰り出していく。この曲がSEであることでBRAHMANのライブがより神秘的なものになっていったと思う。BRAHMANのライブを表現するうえで、このSEが果たしている役割は大きい。

BRAHMAN「Slow Dance」tantrism vol.10 ~STUDIO COAST LAST MATCH~『中央演舞』(2022.1.20)

UNISON SQUARE GARDEN(イズミカワソラ「絵の具 (r-r ver.)」)

 UNISON SQUARE GARDENは、イズミカワソラの「絵の具」を登場SEにしている。イズミカワソラは2019年にベストアルバム『ソラベスト 2』で再録を行ったが、UNISON SQUARE GARDENも以降は再録したバージョン「絵の具 (r-r ver.)」を使用。「絵の具」は、イズミカワソラの優しくも力強い歌声が幻想的な雰囲気を生み出す楽曲だ。UNISON SQUARE GARDENのライブは、MCはほぼなし。隙のないテクニカルなパフォーマンス一本で高揚感を生み出し、優しさと対極のようなストイックさが根底にある。しかし、彼らは初期から変わることなくこのSEを使い続けており、UNISON SQUARE GARDENのライブにおける定番になった印象を受ける。思えば、彼らはいつだって、変わらないために進化し続けたバンドだった。登場SEを変えずにここまでやってきたという事実もまた、そんな哲学の一端を担う存在になっているように思う。

「カオスが極まる」from「TOUR 2023 "Ninth Peel" at TOKYO GARDEN THEATER 2023.07.01」

ハンブレッダーズ(Keno「おはよう。」)

 ハンブレッダーズの登場SEは、アニメ『HUNTER×HUNTER』1作目(フジテレビ系)の主題歌であるKenoの「おはよう。」だ。メンバーが高校生だった2009年、アニメ『けいおん!』(TBS系)に触発されたことがきっかけで文化祭でバンドを組んだことが背景にあり、アニメ好きを公言するメンバーが多いハンブレッダーズらしいセレクトと言える。「スクールカーストの最底辺から青春を歌う」が根底にあるバンドで、独特のひねくれた目線を持っていた彼ら。しかし、鳴らしている音楽はどこまでも実直で、シンプルなロックで、自分が信じたものはどこまでも貫く。その姿勢がバンド活動のベースにあり、アニメ『HUNTER×HUNTER』の主題歌「おはよう。」は、そんなバンドのコアとも通じている気がするのだ。大切なものを大切にしたいという、ハンブレッダーズらしさが投影されているように感じる。

ハンブレッダーズ「銀河高速」from GALAXY PARK at 大阪城ホール

Blue Mash(銀杏BOYZ「BABY BABY」)

 Blue Mashの登場SEは、銀杏BOYZの名曲「BABY BABY」。この曲は銀杏BOYZの中ではポップ色が強く、青春の切なさを絶妙な熱量で描いた楽曲だ。Blue Mashもまた、さまざまな感情をむき出しにしたロックを鳴らすバンドであり、まるで「今から全力でライブをやるから、かかってこいよ」という意志を「BABY BABY」の爆発的な熱量がさらに高めているかのように感じる。そのサウンドやスタンスに銀杏BOYZの影響が感じられるからこそ、Blue MashのSEとしてより意味あるもののように響くし、ライブにおける熱さを演出する要素として、この「BABY BABY」が担う役割は大きい。

海岸線 - Blue Mash (Live)

ブランデー戦記(Pixies「Where Is My Mind?」)

 ブランデー戦記の登場SEは、オルタナティブロックの金字塔、Pixiesの名曲である「Where Is My Mind?」だ。さまざまなオルタナティブロックをルーツに持つブランデー戦記だからこそのチョイスである。フロントマンである蓮月(Gt/Vo)は「Where Is My Mind?」をクライマックスで流したことでも有名なデヴィッド・フィンチャー監督の代表作品である映画『ファイト・クラブ』が好きで、SEの選択にもつながったことを公言している(※1)。自分が影響を受けたカルチャーへの想いをこの楽曲に乗せているとも言えるわけだ。思えば、ブランデー戦記の音楽はいつだって儚い眩さと独特の憧憬を持ち合わせている。バンドが登場SEに選んだ「Where Is My Mind?」は、そんなブランデー戦記の美学を投影しつつ、ライブでもその世界観への導入として機能している印象を受ける。

ブランデー戦記 - Musica (from 2nd EP「悪夢のような1 週間」Release Tour at LIQUIDROOM)

 バンドによって個性が表れている登場SE。次にライブに行くとき、幕開けの瞬間に流れる“あの音楽”を、もっと深く味わってみてほしい。きっと、ステージに立つバンドの素晴らしさが、より鮮やかに伝わってくるはずだ。

※1:https://www.wwdjapan.com/articles/2113844

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