magicHourに初インタビュー “サイバーパンク的な空想力”から生み出す新しい音楽とポピュラーカルチャー

サイバーパンクと生成AIによる表現の親和性
ーー生成AIを使ったMV制作でも注目を集めていますが、MVで生成AIを使うというアイデアはどのようなきっかけで生まれたのでしょうか?
magicHour:林宋其(ハヤシソウキ)さんという新進気鋭のクリエイターに僕のロゴとか、ビジュアル関連を担当してもらっているのですが、MVも制作してもらっています。その彼が生成AIが一般的に使われ始めたばかりの頃、生成AIでサイバーパンクっぽい画像を作ってきたことがあって。僕自身すごくサイバーパンクが好きなこともあって、曲を作っているといつもそういった世界観が頭の中に浮かんでいたんです。そのイメージが生成AIというデジタルなものとすごく相性が良かったということもあって、生成AIを使って自分の曲のMVを作ることにしました。
ーーMV以外に生成AIを使って取り組んでみたい表現はありますか?
magicHour:いつか映画のような映像作品を作ってみたいと思っています。生成AIが登場したことで表現の可能性が広がったことは何かモノづくりをしてみたい人にとってはとても大きなことだと思います。例えば、これまでであれば、3DCGを作ろうとすると、多額のお金が必要だったり、経験だったり、人手がものすごくかかっていたと思うんです。そういった意味では僕みたいな個人でも作品が作りやすくなったというか、頭の中にあるものがそこにとどまらず、ちゃんと作品としてアウトプットできる世界線になったと思います。ただ、その一方で生成AIにはクリエイティビティというものはあまりなく、あくまで僕らが出した指示に従うことしかできません。そう考えると本当に使う人のアイデア次第だと思いますね。
ーーちなみに楽曲制作でもAIは使用されていますか?
magicHour:いわゆる1曲丸ごと作ってくれるような作曲AIは使っていませんが、デモの段階でAIを搭載したマスタリングツールを使うことはあります。でも、それを作品という最終的なアウトプットに使うことはないですね。そういったツールは、手軽に“いい感じ”にはしてくれるのですが、やっぱり細かいところで僕の思ったとおりにはしてくれないんです。先ほども少しお話にあがった、作詞、作曲、プロデュース、レコーディングまで全て一人でこなす大きな理由は、自分が全てコントロールできるからなんです。そこを大事にしているので、AIを楽曲制作で使うことは現状では考えていないですね。ただ、もしかしたら今後AIにしかできない表現がどんどん増えてくるかもしれないですし、さきほどのMVの話も含め、使うかどうかはまた別として、AIの可能性自体は感じています。
ーーサイバーパンクがお好きだというお話がありましたが、そのきっかけを教えてください。
magicHour:幼少期から機械というか、ラジコンが好きだったことが大きいですね。ラジコンって壊れることが多いんですよ。でも、なぜ壊れるのかわからないと困るじゃないですか。それで直してみたら動くんですけど、壊れる原因として、ノイズが出てくるとか、そういう兆候を見て、理由についてよく考えていたんです。そういったことをやっていくと、自然と機械の理解がどんどん深まってくる。その中で「これがもっとこうなったらいいのにな」と考えるようになって、自分のサイバーパンク的な空想力が育まれていくことになったと思っています。
ーー影響を受けたサイバーパンク作品はありますか?
magicHour:やっぱり『ブレードランナー』ですね。それと厳密にはサイバーパンクとは少し違いますが、ディズニーの『トゥモローランド』にも影響を受けました。実は理系の勉強をするのが好きで論文を読んだりすることもあるのですが、少しだけ量子力学に触れていたりもするので個人的にも興味深い作品です。あとは実写版の『攻殻機動隊』(『ゴースト・イン・ザ・シェル』)と定番ですが『レディ・プレイヤー1』にも影響を受けています。
magicHourが考える、新しいポピュラーカルチャーのかたち
ーー「モダンとトラディショナルを融合させた新しい音楽」と「新たなポピュラーカルチャーの形成」を目標とされていますが、具体的にどのようなビジョンをお持ちですか?
magicHour:トラディショナルな50年代や60年代の音楽はすごく素直な音楽というか、今あるマーケティング的な手法のようなノイズがない状態の音楽だと思っています。だからその時代の音楽がすごく好きなのですが、それを単純に今の時代に持ってきたところでそれはそれで違うと思うんです。なのでモダンさを取り入れていく必要があると思っていますが、素直な音楽であるということは大事にしたいです。また、ポピュラーカルチャーは、これからさらに誰でも発信できる世界になっていくと予想しています。これからの時代は以前のように自分がポピュラーカルチャーの第一人者になって、作ったものを他人に理解してもらい、そこから新しい流行を作っていくというよりは、一人ひとりが自分の創作物を作って発信していける時代だと思うんです。他の人やメディアに影響されずに自分が思いついたことをどんどんアウトプットしていき、それが文化として自分のコミュニティに広がっていくことが、新しいポピュラーカルチャーのかたちだと考えています。そして、僕自身もその一部になりたいと思っています。
ーー今後挑戦してみたいプロジェクトはありますか?
magicHour:実は以前、プログラミングをちょっとやってみたり、ゲームデザインを考えたりしたことがあります。今後の大きな目標としては、自分のゲームを作り、かつその音楽と映像も作ることで、それぞれのストーリーを繋げるような大きな世界観の作品を作ってみたいです。
ーー最後に今年中に叶えたい目標や展望を教えてください。
magicHour:1人でも多くの人に僕の曲を楽しんでもらうことが一番の目標ですね。だからこそ、このアルバムを多くの方に聴いてもらえると嬉しいです。
■リリース情報
1stアルバム『MAGICHOUR』
特設ページ:https://www.magichourofficial.com/1st-album
配信:https://orcd.co/mh_magichour
<収録曲>
01. Feel The Same
02. City of Desire
03. Joker (Just Like You)
04. In The City
05. Temporary Lover
06. Blame
07. ILLUMINATION
08. If You Ever
09. Back to U / Remind Me
10. Alright
11. Sunday, Monday
12. Wonderful World
13. MAGIC HOUR
■関連リンク
magicHour 公式Webサイト:https://www.magichourofficial.com/
公式YouTube:https://www.youtube.com/@19hoursmagic