Natsudaidaiとは何者か? 現代版・歌謡曲×ブラックミュージックの追求、“誰かが逃げられる物語”を綴る理由

妄想と言葉遊びから紡がれるNatsudaidaiならではの歌詞世界
――Natsudaidaiの歌詞に関しては、もちろん曲ごとに異なるテーマがあると思うのですが、共通して大事にしていることはありますか? ありきたりな歌詞の言い回しには頼らないような言葉遣いを感じます。
ヨウ:すごいですよね、歌詞を渡されるたびに思います。
Nanae:みんながわかる言葉で、いろんな解釈ができる歌詞を書くことを大切にしていますね。ひとつの捉え方しかできないような言葉は出さない。男女かもわからないようにしています。私が曲を聴く時は私生活の中のBGMにしたいので、Natsudaidaiも、聴いてくれる人の気分に合った音楽になればいいなと思って、あまりわかりやすいことは言わないように心掛けていますね。いろんな解釈をしていただけたら嬉しいです。

――歌詞の出発点は、自分の身近な出来事や思っていることですか?
Nanae:妄想ですね。妄想、得意なんですよ。映画とかを観ても、エンディングの続きはどうなるのかとか、小さい頃からそういうことばかりを1人で妄想していました。逆に自分の身に起きることに対してはあっさりしているタイプなんですけど、他人のことになるとすっごく妄想が膨らみますね。
――面白い。たとえば「Tasting!」だと、何から妄想を広げて書いたんですか?
Nanae:「Tasting!」は、最初にサビの〈とっくに興味は無いけど〉が思いついたんですよ。コードを弾いている時にこの言葉のリズムが面白いなと思ったし、“とっくに”って日本語にしかないんじゃないかなと思って。英語圏の人しかわからないスラングみたいに、日本に住んでないとわからない言葉を必ず曲に入れるようにはしていますね。
ヨウ:面白い、初めて聞きました(笑)。
Nanae:〈とっくに興味は無いけど〉から、〈味見〉というワードが浮かんできて、でも安直に食べ物の話にするのはつまらないなと思って、人と人の関係の話にも捉えられるようにも広げて……みたいな感じで書いていきました。
――〈とっくに〉のハネ具合とか、言葉が持つリズムやアクセントを大事して選んでいるのだろうなということはすごく感じていました。「Escape Plan」は、音楽に浸って身体を揺らす時間は別世界に行けるということを歌っているようで、Natsudaidaiが音楽をする上で大事にしていることをテーマにしたのかなと思っていたんですけど、これはどういうふうに妄想を広げたものですか?
Nanae:地球からの脱走。……私、ロマンチストだと思うんです(笑)。曲を作っている時に部屋から月が見えるんですけど、「あそこに行ったら誰もいないし自由なんだろうな」と思って。
ヨウ:楽しそうだねえ!
Nanae:妄想していると、現実からいなくなれるんですよ。もともと作品の世界に行けちゃうような本とか映画が大好きで。ディズニーとか、大人が作るファンタジーが大好きなんです。だから「Escape Plan」もそうなんですけど、全部の曲で、聴いてくれた人が入り込めちゃうようなファンタジーを作ろうと思っています。“Natsudaidai”っていうファンタジーになったらいいな、誰かが逃げられる物語になったらいいなって。宇多田ヒカルさんが何かのインタビューで「部屋で一人でヘッドホンで聴いてる人に向けて音楽を作ってる」みたいなことを言っていて、マジでそうだなと思ったんです。「Escape Plan」もそういうふうに聴いてくれたら、“逃げられる場所”になるんじゃないかなと思いながら作りました。

最大7人編成、ライブへの期待も 「みんなで踊り狂いたい」
――そんな楽曲たちが入った2nd EPのタイトルを『CHEW』にした理由は?
Nanae:1枚目が『青果店』で、それには「たくさんのアーティストの中から自分たちを選んでほしい、見つけてほしい」という意味があったので、2枚目は「見つけてもらった人たちに噛み砕いてほしい」という意味で『CHEW』にしました。
――イラストレーター・エザキタクヤさんが描くジャケットも毎回可愛いですよね。洋風の絵のテイストかと思いきや、和も感じさせるもので、Natsudaidaiの音楽性と結びついているなと思ってました。
ヨウ:嬉しいです。可愛いですよね、本当にやばいんですよ! Nanaeちゃんがエザキさんを見つけてきてくれて。
Nanae:お願いする前から、エザキさんの作品を見ながら「スイマー」「Tasting!」とかを作っていたんですよ。だから「絶対にエザキさんに描いてほしい!」と思っていたら、快く受けてくださいました。一目で心掴まれるオリジナリティがありますよね。
――4月19日のリリースイベントでは、どんなライブをしたいですか?
Nanae:Natsudaidaiのライブの強みにしたいと思っているのは、音源では打ち込みの楽曲の“ライブアレンジ”。生演奏のライブでしか聴けない迫力を楽しんでいただけたらなと思います。今回は初めてトランペットを迎えた曲もあるので、最大7人編成でやります。みんなで踊り狂いたいですね。初めて来てくれる人もいると思うので、その人の心を掴めたらなと思います。
ヨウ:それが一番ですね。個人的にもレベルアップした姿を見せたいなと思います。ゲストには、私たちが見たいスーパー登山部さんをお呼びして名古屋から来てくださることになりました。
――ヨウさんは、新体制の冨田ラボにシンガーとして加入することも発表されましたが、これについては今どんな気持ちがありますか?
ヨウ:「メンバーに入る」という話が出た時、最初は意味がわからなくて。メンバーみんな、個性が立っている方で、すごいんですよ。みんなのいい部分を取ってすごくかっこいい曲に仕上げてくださって、「本当に私でいいのかな」と思っちゃうくらい。それに、曲が出てからの反響が大きくて驚きました。曲調も歌い方もNatsudaidaiとはまた違うので、新しい扉を開いた感じがありますね。冨田ラボでの目標としては、みんな個性が立っている中で、私もしっかりと個性を際立たせて存在感を出していくこと。Natsudaidaiとはまた別で、冨田ラボも頑張っていきたいです。

■リリース情報
2nd EP『CHEW』
2025年4月2日(水)リリース
詳細:https://natsudaidai.fanpla.jp/discography/
■ライブ情報
『Natsudaidai release party “CHEW”』
日 時:2025年4月19日(土) open_17:30 start_18:00
場 所:東京・下北沢ADRIFT
ゲスト:スーパー登山部
■関連リンク
公式サイト:https://natsudaidai.fanpla.jp/
公式X(旧Twitter):https://x.com/_natsudaidai__
公式YouTube channel:https://www.youtube.com/@Natsudaidai.Official