My Hair is Badの存在が結成の後押しに 上越発 ミニマムジークが目指す、音楽を通して理解し合える世界

ミニマムジーク、1stアルバムに至るまで

「“善悪のない世界に行きたい”というのは一貫して持っている感情」

――歌詞についても伺いたいのですが、「楽園」の〈愛ではなくとも最高の恋であるのは間違いない〉というフレーズが特に興味深かったです。恋愛ソングでは“愛”が“恋”よりも上位のものとして扱われがちだけど、その前提に疑問を投げかけるような歌詞が新しいなと思いました。

山之内:ありがとうございます。

――楽曲のラストで〈そしたらもう善悪もなくなった/2人の楽園で生きたい〉と逃避願望を歌っているのも気になりました。「恋よりも愛のほうが、本当に上なのか?」という感じで、善悪のジャッジを下されがちな環境……もっと言うと、みんながみんなをジャッジする社会の空気に対して、山之内さんは息苦しさを感じていて、だから逃避したくなるのかなと想像しました。

山之内:ちょっと言い当てられすぎて……(笑)。「楽園」は聴いている人を諭すように書いた曲ではなく、「自分の中にあるこの感情、誰か理解してくれない?」という願望を込めて書いた曲なんですよ。「これも正解にしてくれない?」という感じで。逃避と言っていただいたのも、まさにその通り。「善悪のない世界に行きたい」というような歌詞は、「楽園」に限らずいろいろな曲に入っていると思うので、自分が一貫して持っている感情だと思います。

――そんな山之内さんにとって、バンドや音楽はどんなものなのでしょう。例えば「社会は窮屈だけど、音楽はいろいろなことを許してくれる」「外の世界の物差しから解放されて、自分たちのやりたいようにできる」という感覚はありますか?

山之内: うーん……そこは自分の中で上手く紐づけられなくて。例えば恋愛だったら、“君”と“僕”が正解だと思えていたら、それで完結でいいと思うんですよ。たとえ周りから変に見えたとしても。だけど音楽は「自分たちがよければいいでしょ」という気持ちではやっていなくて、聴いている人も含めて完結させなきゃいけないと思っているから……すみません、ちょっと答えがまとまらないんですけど……。

――確かに、お客さんから好評だったから、ポップな曲に挑戦してみたという話もありましたしね。

山之内:そうですね。そう考えると、僕らミニマムジークと聴いてくれているお客さんの“一対一”が成立して、理解し合える世界であればいいなと思いながら、音楽をやっているのかも。

――そのためにはまず、この3人がまとまっている必要がありますが、アルバムを聴くと、3人で同じ方を見られているんだろうなと感じます。山之内さんが歌いたいこと、音楽で描きたいイメージを、鍋島さんやオオサキさんも理解して鳴らしているというか。

山之内:僕はまとめようと思ったことが一度もないのに、なんか自然とまとまってるんですよね。それは2人のおかげなのかもしれません。「なんでついてきてくれたの?」っていまだに思ってます。

鍋島:僕がこのバンドに入りたいと思ったのは、曲を聴いた時に「このバンドだったら人生賭けられるな」と思ったからですよ。それに価値観とかも結構合うし、一緒にいて楽しいから今も一緒にいる、みたいな。

オオサキ:僕が彼についていこうと思った理由は、人間性とかいろいろありますけど、歌詞が一番大きいかもしれないです。彼の曲を聴くと「こんな歌詞は聴いたことなかった」と思うんですよ。例えば、今回のアルバムには入っていないんですけど、「妬み」という曲があって。

山之内:2枚目のデモに入っている曲だよね。ちょうどオオサキと出会った時期に書いた曲。

オオサキ:その曲の歌い出しが〈なあ、お前そこどけよ〉なんですよ。周りの同世代を見ていると、みんな「何者かになりたい」という欲求を持っているんだなと思いますけど、「妬み」はそうじゃなくて、“何者か”になった人を非難する方向性の曲なんです。

山之内:いやー、自分でも嫌になるくらいのエゴ……(笑)。

オオサキ:さっき言ってた、上越の人特有の陰気さが出てると思う(笑)。僕は作詞作曲をしないけど、もしも作る側にまわったとしても、こういう言葉は絶対に出せないだろうなと。面白い歌詞だなといつも思ってますよ。

山之内:こんなふうに言ってもらえてありがたいですね、本当に。でも狙ってわざと危なっかしいことを言ったり、ちょっと盛って歌詞を書くようになったら、一気に冷めちゃうからそこは気をつけたいです。自分から出る言葉が本当に一切飾っていない言葉なのか、書いては振り返って、書いては振り返って……ということを、これからも続けていくんだと思います。

――最後に、今後の展望や実現させたい目標を教えてください。

山之内:制作に関しては、もっと独創的なアウトプットができるんじゃないかと思っているので、試行錯誤を重ねながら頑張っていきたいです。

鍋島:ライブのカッコよさと音源のよさ、どっちも体現し続けられるバンドでいたいよね。

山之内:わかる。ライブに関しては「行けるところまで行くぞ」という気持ちでいますけど、近い目標で言うと、地元のライブハウスでワンマンライブがしたいです。

オオサキ:うん。地元でのワンマンライブはすごく意味のあることだと思います。あと、個人的には「こんなバンドと共演したい」という気持ちがあって。

――それは誰ですか?

オオサキ:例えば、 リーガルリリーとか。あとは自分たちがカッコいいと思うバンドと出会えたら、1回だけじゃなくて何回でも一緒にやりたいなと思います。

山之内:確かに。今一緒にやってるカッコいいバンドたちから、この先も必要とされるバンドでありたいですね。

『標本』

◾️リリース情報
1stフルアルバム『標本』
2025年4月2日(水)リリース
価格:¥2,750(税込)
品番:TMO-002
レーベル:tomorrow off
<収録曲>
1.銀世界
2.羊
3.取り憑かれたい
4.アイマイニーマイン
5.幸福の標本
6.ごはんのうた
7.Film RAY
8.楽園
9.SEE THE LIGHT
10.どうかしてる?
11.エンゼル
12.ファジー

◾️ライブ情報
ミニマムジーク
1st full album"標本"release『VXツアー』
5月3日(土)千葉LOOK
5月4日(日)静岡LIVE HOUSE UMBER
5月6日(火)松本ALECX
5月11日(日)滋賀B-FLAT
5月22日(木)金沢vanvanV4
5月23日(金)新潟CLUB RIVERST
5月30日(金)水戸LIGHT HOUSE
6月1日(日)仙台FLYING SON
6月10日(火)岡山CRAZYMAMA 2ndRoom
6月11日(水)KYOTO MUSE
6月13日(金)名古屋RADSEVEN
6月14日(土)富山SOUL POWER
6月16日(月)高田馬場CLUB PHASE
6月30日(月)宇都宮HELLO DOLLY
7月1日(火)F.A.D YOKOHAMA
7月4日(金)札幌COUNTER ACTION
7月10日(木)神戸太陽と虎
7月11日(金)高松RIZIN'
7月15日(火)広島4.14
7月16日(水)福岡OP's
8月8日(金)渋谷Spotify O-Crest
8月17日(日)心斎橋BRONZE
8月23日(土)上越EARTH
対バンは後日発表

ミニマムジーク 公式HP

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