「鼻から牛乳」令和篇から大阪・関西万博ソングまで 嘉門タツオが語る、笑いの裏に隠された本音と哲学

嘉門タツオ、笑いの裏に隠された本音と哲学

水面下で進む「嘉門タツオ記念館」の構想

嘉門タツオ『至福の楽園~歌と笑いのパラダイス』インタビュー(撮影=加古伸弥)

嘉門タツオ『至福の楽園~歌と笑いのパラダイス』インタビュー(撮影=加古伸弥)

――それは嘉門さんの歌の哲学ですよね。常識を疑う、それが笑いに繋がるという面白さは常にあると思います。あと、笑福亭笑瓶さんに向けた歌「バイバイ笑瓶ちゃん」もとても胸に沁みる追悼歌です。

嘉門:これは、仲が良かった根本要(スターダスト☆レビュー)さん、北野誠、桂雀々と僕とで、一周忌のライブを大阪でやった時に、僕にできることは歌にすることかなということで、そこで歌った曲がベースになってます。今回は弦楽カルテットでアレンジしてもらいました。

――素晴らしいアレンジです。でも、もっとしんみりするかなと思ったら、そこまで悲しいわけではなく、じんわりあったかい感じがします。

嘉門:ええ人でしたからね。人生の幕引き、終わり方は、笑瓶とか雀々とかもそうですし、西田敏行さんなんかもよかったと思うんですよ。「よかった」って言うのもおかしいけど、あの送られ方を見ると、やっぱり人がよかったというのがよく表れていた会で。大事なんですよね、「面白い人やったな」っていう残像を残せるかどうかが、僕のテーマなんで。だから何十年後になるかわかりませんけども、“嘉門タツオ記念館”の計画を立てています。そのためにわかりやすく資料を整理したりとかして。各エピソードをわかりやすく、いろんなコーナーを作ったりして。「鼻から牛乳」を最初に書いたノートはこれなんや、とか。

――取ってあるんですか。

嘉門:全部ある。小学校の通信簿も、中学時代に「将来はサラリーマンにはなりたくない」って書いた作文もある(笑)。歌も中学2年生から作ってるから、その時のカセットを数年前にmp3に落としたので、全部あるんですよ。

 面白い話があって、中3の時に3人で歌を作って歌ってたメンバーがいて、そのなかのひとりが考古学者になってるんですね。それでこのあいだ久々に一緒に食事をした時に「お前がずっと遺跡を掘ってきたことを歌にしいや」って言ったんですよ。「『風に立つライオン』(さだまさし/1987年)みたいな歌が書けるやろ」って(笑)。

――いいですね(笑)。ものすごくドラマチック。

嘉門:14歳の時に作った、僕が作詞して彼が作曲した「ドリームトラベル」って曲があるんですよ。「僕らはどんなところでも布団のなかに入ったら夢の世界へ、好きなところへ行けるよ」っていう曲がカセットで残ってて。それを思い出した時に、まさに「ドリームトラベル」やなって。僕は歌と笑いでやってきて、彼は考古学でやってきて、14歳の時にそれぞれ違う列車に乗って発車したけど、それが66歳になって、たまたま今すれ違おうとしている。

――最高です。笑えて泣けますよ。いつか「ドリームトラベル」を世に出してください。

嘉門:長年やってると、物語性とか、人との繋がりとか、そういうことを強く意識するようになるんですね。僕は最初に笑福亭鶴光師匠のところにおって、その弟弟子の笑福亭鶴瓶さんを見て「僕もああいう日常的な会話とかをやりたい」と思ったけど、鶴光師匠は芸風が違うから、それは僕には合わんかったんです。でも、その頃に出会った鶴瓶さんやさんまさん、みなさんとの関わり合いはずっと繋がっていて。さんまさんのことだけでもエピソードはいっぱいあるんですよ。たくさんの人に出会って、経験もして、僕にしか歌えないことがある。ずっとやってきたからこそ、ここにきて歌えることっていうのが、発酵された、ええ状態で出てきてるんですよ。

――まさにご縁ですね。

嘉門:そういうものが、このアルバムにはよく表れてますね。これは、そういうことを歌い始める最初のアルバムだと思ってるんで。いやあ、面白いですよね。

嘉門タツオ『至福の楽園~歌と笑いのパラダイス』インタビュー(撮影=加古伸弥)

――東京でのライブが終わり、30日に大阪、4月12日に名古屋でライブがありますが、アルバム収録曲を中心にガンガン歌いまくる感じですか。

嘉門:歌いまくりますよ。今回は、テレビ界を斬ろうかなって思ってるんです。

――おおー。それは今、かなり危険じゃないですか(笑)。

嘉門:でも、それって今の社会的なテーマじゃないですか。「テレビって何やねん」「ゴールデンのバラエティって本当に面白いのか?」と思ってる人もいると思うんですよ。このあいだも昼間のテレビを観てたら、ロケでグルメレポートとかやってて、タレントが肉まんか何かをパカっと割って、そのアップが移った時にスタジオにおる人たちは「おいしそう!」って言うんやけど、やっぱりわざとらしく思えてしまったりして。

――まさに「当たり前を当たり前と思うな」ということですよね。

嘉門:そういうところを、ちょっと追求してみたいと思ってます。

――ぜひ、その場でしかやれないネタもたくさんやってください(笑)。それが嘉門さんのライブの醍醐味なので。

嘉門:ライブバージョンやから、固有名詞もいっぱい出しますよ(笑)。ニューアルバムからの曲もツアーでは初めてというものもあるので、よかったら、ぜひ観にきてください。

■リリース情報
アルバム『至福の楽園~歌と笑いのパラダイス~』
発売中

配信リンク:https://king-records.lnk.to/kamon_rakuen

価格:¥3,300 (税込)

<収録内容>
01. ハンバーガーショップ~カフェチーノ篇~
02. インバウンド・ブルー
03. 鼻から牛乳~令和篇~(アルバムバージョン)
04. ギャーシリーズ(キッズライブバージョン)
05. どんなんやねん(ライブバージョン)
06. なごり寿司(さびマシマシ)~なごり雪~
07. 焼き鳥バカ一代
08. カッコ良く言ってみるシリーズ
09. 言うたらアカンがな
10. 大阪・関西万博エキスポ~港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ~
11. 小市民~昭和篇~
12. 60なかば
13. 知らんけど
14. うまい事言うなぁ
15. バイバイ笑瓶ちゃん
16. ギターパラダイス

■ツアー情報
『嘉門タツオ 至福の楽園~歌と笑いのパラダイス~』
※終了した公演は割愛

2025年3月30日(日)
大阪・なんばHatch
開場 15:30/開演 16:00

2025年4月12日(土)
名古屋・ボトムライン
開場 16:00/開演 17:00

ツアー/チケット情報はこちら

嘉門タツオ オフィシャルサイト:http://www.sakurasaku-office.co.jp/kamon/
X(旧Twitter):https://x.com/kamontatsuo
Instagram:https://www.instagram.com/tatsuotorikai/
Facebook:https://www.facebook.com/kamon.tatsuo
TikTok:https://www.tiktok.com/@tatsuokamon
YouTube:https://www.youtube.com/channel/UC4sJvvrvmVlv2Pe1AMtCBMw
ブログ:https://ameblo.jp/kamontatsuo/

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる