aimi、フルバンド編成で届けたこの上なく上質なR&Bショー 初のワンマンライブは最高で最幸な夜に

先に結論を書いてしまうと、2月21日に渋谷WWWで開催されたaimi初のワンマンライブは、この上なく上質なR&Bショーだった。強靭なグルーヴを生み出す最強の演奏陣。抑揚をつけながら色鮮やかに感情を解き放つaimiのボーカル。それらが溶け合い、絡み合い、高まり合って、とてつもなく大きなエネルギーを生み出し、観客を次から次へと巻き込んでいく。演奏が繰り出されるたび、曲が終わるたびに、自然にゆっくりと確実に会場が熱を帯びていく。アンコールやカバーを含めて全24曲を約100分に凝縮したステージは、優艶で力強く濃密。会場を埋め尽くしたすべての観客が、最高! ヤバい! 感動! 楽しかった! と思ったことだろう。

この日の最大の特徴は、ライブ全体がひとつの流れになるように構成されていたことだ。先日、本人にインタビューした際に「かなり緻密に構成したショーアップされたライブにします」と語っていたが(※1)、まさかここまで綿密に練り上げてくるとは驚きだった。まず第一に音が途切れないよう組み立てられていて、ほとんどの曲間が短くスムーズに繋げられている。演出上、曲の切り替えで音が止む場面があっても、その「間」すらひとつのリズムと捉えられるほどシームレスな展開。基本的にMCは流れを止めないようタイトになっていたし、MCをするにしても次曲のイントロに乗せて話すなど、本当に細かい部分まで演出が行き届いていた。
フルバンド編成で臨んだ今回のライブには、aimiのラブコールで4人の名手が集結。キーボード兼バンマスはGakushi、DJ兼マニピュレーターはDJ DAISHIZEN。2人は久保田利伸や三浦大知のツアーサポートを務めるなど、日本のR&Bライブを現場から知る辣腕だ。ベースの堀井慶一もまた久保田利伸やCrystal KayなどR&Bのツアー/セッションに引っ張りだこの名プレイヤー。ドラムの松浦千昇はSuchmosのTAIHEIが率いるバンド・賽のメンバーであり、20代でありながらジャズ畑でも活躍する若手実力派だ。
そんなスゴ腕4人が開演時刻を少し過ぎた頃、暗がりのステージに登場。始まりを告げるイントロダクションよろしく、感情爆発的なチョーキングギターとドラム打ち鳴らしによる派手なセッションを繰り出す。30秒ほどの演奏後、ステージ横からaimiが颯爽と現れると、演奏は1曲目「Chosen One」のメロウなイントロへとスッとシフトチェンジ。そして、歌い出しの〈Can we celebrate〉の〈celebrate〉の拍のところでバシッと音を止めるキメが炸裂。ここまでわずか1分ほどだったが、痺れるほどタイトでカッコイイ始まりに客席から「Whoo~!!」という歓声が上がり、ライブが幕を開けた。

2曲目、3曲目は2月にリリースした最新EP『Empower.Embrace』から。ディスコハウス調の「Love Like That」では場内が華やぎ、バウンシーな「(wanna vibe) with you」ではハッピーなムードが満ちていく。ここまでの3曲に限らず、この日は全編バンドならではのライブアレンジで演奏。海外のオーセンティックなR&Bライブでは“あるある”だが、キメやブレイクを多用した演奏が随所で繰り広げられた。そうしてアクセントをつけることでメリハリが出て演奏が引き締まるし、観客側も乗りがわかりやすくなる。aimiも曲の途中で「Hey! Hey!」という掛け声を入れたり、サビ前で「1, 2, 3, 4」などとカウントを入れることでリズムに乗るタイミングやグルーヴを強調。そうしたパフォーマンスがグッグッと引っ張っていく牽引力やライブ全体の推進力を生み出し、それが会場の熱気を次第に高めていく大きな要因になっていたことも特筆すべきポイントだ。
3曲披露したあとの最初のMCでは、待ち望んでいた初ワンマンを迎えられた喜びを「やっと来ました、来てしまいました」と少し照れくさそうに報告。「この日を何度も想像したのに、想像を遙かに超えるたくさんの人が(目の前に)います。平日にもかかわらず本当にみなさんありがとう」と感謝を伝えた。続けて「夢がこうやってまたひとつ叶ったんだなって感じてます。今日は最高の夜にしていきましょう!」と満面の笑みで誓うと、観客もそれに応えるように温かな拍手でエールを送る。

その後は、2020年から活動を始めて5年越しでワンマンが実現したことに触れ、懐かしいナンバーを披露。1st EP『Water Me』に収録されている「Show Me」「Sorry」「Thinkin’」と2021年のシングル「Lovesick」をメドレーで聴かせ、活動初期からのファンを喜ばせた。
「ここまでアゲ過ぎたから、スローダウンしてもいい?」という呼びかけから始まった中盤はR&B愛にあふれたイースターエッグが炸裂したセクションだった。「R&B好きのみんなだったらこんな曲をやったら楽しめるかなと思ってR&Bの名曲とあの曲をマッシュアップしてバンドでやりたいと思います」と伝えてから演奏されたのはSZA「Snooze」のカバー。ビヨンセの「Me, Myself and I」のビートの上で両曲を混ぜて歌うというお見事なマッシュアップだった。続くオリジナル曲「The Fool, The Lovers」では、間奏でGakushiがトークボックスでロジャーの「I Want to Be Your Man」のフレーズを繰り出し、2曲が自然と溶け合っていく。脱帽ものの仕掛けに驚いている暇もなく、次は「私の大好きなアーティストを呼んでもいいですか?」とEMI MARIAを呼び入れ、コラボ曲「Day N Night」と「How's The Weather?」を披露。2曲の途中に設けられたEMI MARIAとのトークでは、「EMI MARIAとは通じ合う部分がたくさんあって、引き寄せあっていたんじゃないか」とコラボした理由を明かし、「ずっと歌い続けてください。日本にEMI MARIAがいて本当によかったって思ってます。これからもずっと一緒に歌いたいです」と多大なる愛とリスペクトを送った。

EMI MARIAを送り出したあとはバンドがアフロビーツのリズムを刻み始め、ポッドキャスト「Detox Lounge」のトークパートナーであり、ダンサーのYacheemiが勢いよく登場。aimiは羽織っていたショートファーブルゾンを脱いで両肩を露出し、2人で揃いのステップを踏みながら「Good Without You」へと突入していく。ここはアフロビーツのセクションでtofubeatsとコラボした「No One Is」を挟んだあとは、Tylaの世界的ヒット曲「Water」のカバーへ。ここで再びYacheemiが登場し、2人で「Water」がバズったきっかけとなった、腰とお尻を上下にフリフリするWater Dance Challengeのダンスを披露して、場内を盛り上げていった。


その後は、「R&Bクイーンをお迎えします」という紹介からJASMINEを招き入れ、2人のコラボ曲「Risk It All」を披露。2ヴァース目に入るところでaimiが「Remix!」とシャウトすると、ビートがメアリー・J・ブライジ の「Family Affair」に一変し、ヒップホップR&Bのタフなビートで楽曲に込めた反骨心をメッセージしていった。ちなみに、この曲ではJASMINEがラップパートの出だしで興奮のあまり歌詞が飛ぶ場面も。演奏後にすぐさまJASMINEが「ごめんなさい! ちょっと失敗しちゃったー!」と謝ると、すぐさまaimiが歌詞を引用して「だったら今〈Show me what you got?〉」とフォローを入れて「もう一回歌おうよ」と2人でその部分をアカペラで披露する嬉しいハプニングもあった。

まだまだR&Bネタは終わらない。JASMINEを送り出した直後、DJ DAISHIZENがJAY-Zとビヨンセの共演曲「’03 Bonnie & Clyde」のインストをプレイ。そこから継ぎ目なくY2K R&Bオマージュといえる楽曲「Sippin' Sake」へとなだれ込む。セクシーさ全開のこの曲では、カクテルグラスを片手に身体をくねらせたり、開脚してしゃがむ動きを見せるなど、妖艶なパフォーマンスで魅了していった。
