17歳で叶えた3つの夢 18歳になったマリンブルーデージー 海音が語る“これから” 「バンドが続くことが一番の夢」

海音“17歳で叶えた3つの夢”

 この春に高校生活を終える、長崎県佐世保市出身の3人組ガールズバンド、マリンブルーデージー。ギター&ボーカルで全曲のソングライティングも担う海音(あまね)は、1年前となる昨年2月15日、16歳最後の夜にSNS上で「17歳で叶える3つの夢」を公言。“東京でのライブ”と“初アルバムの発表”という2つの夢を実現させた彼女たちは、今年2月11日に“地元・初ワンマンのソールドアウト”という3つ目の夢も見事達成した。

 そこで、リアルサウンドでは、メディア初となる海音への撮り下ろしインタビューを実施。18歳の誕生日当日である2月16日に単身上京した彼女に「17歳で叶える3つの夢」を振り返ってもらうとともに、「これまでの人生を詰め込んだ」というアルバムについてもじっくりと話を聞いた。(永堀アツオ)

「17歳で叶える3つの夢」を振り返る

——まずは、ソールドアウトで迎えた佐世保・GARNETでのワンマンライブを終えた感想から聞かせてください。

海音:夢だったワンマンライブが終わって一安心っていうのもあるんですけど、とにかくたくさんの人に来ていただけてとても嬉しかったです。私達の想像よりも、それを遥かに超えた盛り上がりが返ってきて……ワンマンってこういうことが起こるんだなっていう驚きと喜びがありました。

——1年前の「17歳で叶える3つの夢」がすべて叶った瞬間でもありましたね。

海音:まずは「嬉しい」っていう気持ちが一番ですね。最初にこの夢を決めたときは、本当に叶うかなんてわからなかったし、自信もなかったんです。でも、本当に叶って、「夢って口に出すと叶うんだな」っていうことを実感しました。

17歳。 全員の決意と目標を共に。

——改めて、「3つの夢」を決めた当時の心境を振り返っていただけますか? 叶った順番で言うと、1つ目は“東京でのライブ”でしたね。

海音:その時はまだ東京でライブをしたことがなくて。長崎とか佐賀とか、知り合いに繋げていただいた近くの県だけでライブをすることが多かったんですね。だから、正直に言うと、「憧れの東京でライブができたらいいな〜」くらいの気持ちで決めました。

——夢を公言した半年後となる去年8月に下北沢のDaisyBar(『AFTER HOURS“マリンブルーデージー1st TOUR「<3 Song」〜いつか大人になっても〜”』)とMOSAiC(『Eggs presents「#楽園収穫祭」』)でライブイベントに出演しましたね。

海音:やっぱり地方と違って、ガールズバンドも、同じ3ピースバンドもたくさんいて。地元・九州には同年代のバンドが少なかったんですよね。でも、東京に来た瞬間に周りのレベルが上がったので、私達も頑張らなきゃいけないなって、一気に背筋が伸びたのが1日目のDaisyBarでした。2日目のMOSAiCはお客さんの層が違うなって感じて。マリブルを知らないけど、たまたま来たよっていう方もいらっしゃったし、私が大好きなフジタカコさんのファンの皆さんにも話しかけていただいたんです。どんな反応をされるのかもわからなかったので全部が手探りだったんですけど、思った以上に温かい場所でした。共演したバンドの皆さん全員と連絡先を交換して繋がれたし、この1年で一番濃かった日でしたね。

マリンブルーデージー・海音(撮影=三橋優美子)

——そして、2つ目の夢である1stアルバム『この日々をお守りに』が昨年12月21日にリリースされました。

海音:元々はアルバムを出したいと思って、この夢を掲げたわけではなくて。いろんな曲を作ってる中で、この曲たちをまとめなきゃいけないなと思ったのがきっかけでした。これをストーリーとしてまとめた時に、また別のものがみんなに届くんじゃないかなって。そうなると、やっぱりアルバムという形が一番ベストだな、と。

——全10曲という流れの中でどんなストーリーを見せたいと思っていましたか?

海音:“自分の人生を詰め込んだアルバム”にしたいなと思っていました。最初の方は、私が中学時代に不登校だった時の学校や大人、自分自身に対する不満をまとめた、ちょっとロックな曲が多くて。最後の方は、学校という縛りを抜けて、メンバーと出会って、第2の人生が始まった後の曲たちを入れています。自分的には人生のすべてを詰め込めたと思ってます。

マリンブルーデージー1st album「この日々をお守りに」official teaser

——オープニングナンバー「Diary -instrumental-」はインストで、ピアノやフルート、学校のチャイムや日記のページをめくる音が入っていますね。

海音:ミックスする前まで、全部ひとりで作ったんですけど、ピアノも自分で考えて。

——ピアノも弾けるんですか?

海音:ピアノがもともと主食というか(笑)、一番最初に弾けるようになった楽器だったんです。ピアノは小学2年生から始めて、中学校の吹奏楽部でフルートを始めました。フルートも自分で吹いてます。当時は、部活にしか行けてなかったんですよ。フルートだけが生き甲斐だったので、その時の想いをどうにか詰め込みたいなと思って。中学校の時にこっそり録音しておいた音を入れました。

——あと、ガラスが割れる音がしますよね。

海音:マリンブルーデージーはお花を想定して作った言葉なので、花瓶が割れる音を入れたくて。部活が上手くいかなかった、人間関係が壊れてしまったっていうのを花瓶が割れる音で表現しています。そのあとの泣いている声も、実際に泣いている時の声を録音してます。最後はギターとベースとドラムが入って、バンド形態になって終わるっていうのが「Diary」で表現したかったことですね。

——バンド名の由来も聞いていいですか?

海音:高校1年生の時にみんなで初めて集まった時に決めたんですけど、色やお花の名前を入れたいね、とか、長崎は海の町だからブルーや青系が合いそうだよねって話してて。ブルーデイジーっていう花があるんですけど、花言葉が“協力”、“恵まれている”、“可愛いあなた”という、全部がすごく素敵な言葉なんですね。だから、長崎をイメージした“マリンブルー”と“ブルーデイジー”をガチャンとして。あと、これは後付けなんですけど、概念の言葉にしたかったんですよ。喩えば、テレビとか、物の名前を入れたくなかったというか。何かわからないような概念、モヤモヤのものをバンド名にしたかった。なので、“マリンブルーデージー”になりました。

マリンブルーデージー・海音(撮影=三橋優美子)

——続く「青春」では、いじめや不登校について触れていて。同じような経験はしてないんですが、学生時代に先生から言われたひどい言葉をふと思い出してしまいました。

海音:よかったです。正直、今の言葉を聞いて計画通りだなって思いました(笑)。学校に行ってる子たちでも、きっと半分以上の人たちは一度は壁にぶつかると思ってて。大人との壁、先生との壁、親との壁、友達との壁。だから、絶対に共感してくれる人もいるだろうとわかっていたし、そもそも自分は曲を作るために不登校の時期があったと思うことでこの事実を受け入れたかったところがあったので、この曲を作りました。

——「藍にしずく」はいくつの頃に作った曲ですか。

海音:それこそ、不登校だった15歳の時に作った曲ですね。命を砂時計に喩えた楽曲なんですけど、自分が不登校だった時に支えてくれてたお母さんを悲しませたくなかったんですね。「生きてるだけでいいよ」って言いながらも泣いてたお母さんがいて。ごめんねっていう気持ちもありながら、同じような状況で存在価値がわからなくなっちゃった子たちに、「泣かないで、命の砂時計を終わらせないで」っていう曲を作りたいなと思っていました。

——自分の心情を歌うだけではなく、“君”や“あなた”に対して呼び掛けてますよね。

海音:はい、そこは意識してます。自分の人生を生かすには、自分だけでは完結できないって気づいて。ほかの人に伝えてからこそ、初めて生かすことができるなって思ったので、「藍にしずく」からは歌詞も外を向いてますね。

“歌い続ける”という人生の決意

——「らったった」は一転して、ライブで一緒に歌えるような明るく楽しい曲になっています。

海音:正直、この曲を作った時のことをまったく覚えてなくて。ちょっとふざけた感じが自分らしくないなって思うことはあるんですけど、悲しいことをあえてポップに歌ってみようっていう気持ちがきっかけで作った曲だったと思います。コール&レスポンスも絶対に楽しいことはわかってたので、挑戦する気持ちで作りました。

「らったった」 マリンブルーデージー official music video

——「らったった」と「ずっっっと!」には〈いつかは報われたい〉、〈報われたい夜〉というフレーズもありますが、「3つの夢」を叶えて報われましたか?

海音:このアルバムの中に詰め込んだ人生はすべて報われたなと思いました。ただ、これからがどうなるのかはまだ私にもわからないので、変化が楽しみだなってずっと思ってます。

——その「変わりたい」って気持ちも入ってますよね。

海音:たぶん、ずっと人に迷惑をかけてるっていう自覚がありすぎたんですよね。自分のせいで親が喧嘩したり、自分のせいで学校が悪く言われたり、いろんなことがあって。その時に、自分は“普通”にすることができないって気づいた。みんなは朝起きれるけれど、自分は起きれなくて、学校に行けない。それがすごく苦しくて、当時は“普通”になりたいと思って、「変わりたい」っていう歌詞を書いていました。でも今は、“普通”を目指しすぎるのは違うなとも気づけたんです。今、「変わりたい」って歌う時は、「理想の自分に近づきたい」という前向きな気持ちで歌ってます。

——“理想の自分”とはどんなものですか?

海音:月並みな言葉なんですけど、“後悔のない人生を送っている自分”は理想だと思います。本当に後悔をしないで生きていけたら、それが人生の正解というか。正解って言葉はあまり好きじゃないんですけど、自分自身にとっての“正解”を見つけた時に初めて自分を認めてあげられる気がするので、後悔のないように、今できることはできるだけやりたいと思っています。

——そして、5曲目の「言霊」はロックバラードになっています。

海音:これは15歳の時に作った曲です。Bメロの〈悩んでも変わらない事ばかりだけど、/伝えても変わらないのは、本当か。〉は自分に対して歌った言葉ですね。12歳とか、その時期に否定されていた自分を思い浮かべて。その時の自分にこういう言葉があったら、もう少し前を向けたんじゃないか、少しは心が楽になったんじゃないかって。言葉に出すのは大事だと思うし、言霊にはちゃんと力があるから、それを信じて諦めないでほしいと思いながら作りました。

マリンブルーデージー・海音(撮影=三橋優美子)

——自分のための曲だとしても、「らったった」「言霊」の主語は“僕ら”ですよね。それに“歌い続ける”ということも言っていて。

海音:それは、アルバムとしてじゃなくて、人生の中の決意ですね。絶対に歌い続けていきたいんですよ。この決意に対して、これからの自分が責任を取っていこうと思ってますし、それが生き甲斐にもなっている。今、とても幸せだなと思います。

——15歳で自分の人生でやるべきことが見つかっているんですね。続く「JKブランド」は、制服を捨てるという攻撃的なミクスチャーロックになってます。

海音:めちゃめちゃ尖って作りました(笑)。〈愛されたいの〉っていうサビだけが決まっていたんですけど、TikTokを見ていた時に、ダンスだけでバズったりとか、顔出しすればバズるみたいな風潮がすごく嫌だなってふと思ったんです。高校生であっても年齢を売りにするんじゃなくて、曲で勝負してほしいし、顔よりは中身で勝負してほしいし、自分もそうでありたいなっていう。自分に言い聞かせるためにもあえて周りを煽るような曲を作りました。

——〈情熱がない/草食系とかちょっとダサい(笑)〉とか。

海音:普段はダサいとか言わないんですけどね(笑)。みんなに曲を聴いてほしいなら、ダンス動画やカバー動画じゃなくて、オリジナルでもっと肉食で熱量を出してみせろよ! っていう。

「JKブランド」マリンブルーデージー official music video

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