Crossfaith「“バンド辞める”って決断をしなくてよかった」 最大のミッション、幕張メッセ初日ワンマンを観て

Crossfaith、史上最大のミッションを観て

 ライブ活動休止期間およびメンバーチェンジという激動を経て、約6年ぶりのフルアルバム『AЯK』を完成させたCrossfaith。『AЯK』には、日本のラウド/メタルシーンの新境地を開拓し続けてきたCrossfaithの誇りと意地、新たな刺激を吸収してより進化してみせるという野望がたぎっていた。彼らは渾身のアルバムを携えて、再始動後最長となる全26公演のツアーを敢行。そして、自ら「バンド史上最大のミッション」と掲げた幕張メッセに立った。2017年の幕張メッセイベントホールよりもキャパを広げた7・8ホールでのワンマン、さらに2日目には初の大型主催フェス『HYPER PLANET 2025』を開催するという挑戦を通して、Crossfaithは何を掴んだのか。第2章の始まりを高らかに宣言した初日・ワンマンライブのレポートをお送りする。

 フォトスポットやバーが設置され、Crossfaithらしいお祭りムードに包まれた会場。翌日にはフェスのメインステージとなるライブエリアに、Crossfaithを見にきた観客だけが集まっていた。ワンマンだから当然なのだが、フェスと見紛うほど場内の熱気が高く、フロアは人で埋め尽くされている。今か今かと待ちわびるなか、予定時刻を少し過ぎた頃にゆっくりと照明が落ち、大歓声が開幕を告げた。

 不穏な赤い照明に照らされ、紗幕にフードを被った5人のシルエットが浮かび上がる。センターのKoie(Vo)が両手を広げた瞬間、これまで数々の場面で最後に演奏されてきた代表曲「Leviathan」の鐘の音を合図に紗幕が降下。メンバーはフードを目深に被ったまま演奏し、「Leviathan」のタイトルどおり悪魔降臨の儀式のようだ。いきなりのキラーチューンにオーディエンスも一気に火がつき、我先にと轟音のなかに飛びこんでいった。

Crossfaith『OUR FAITH WILL NEVER DIE』
Koie(Vo)(photo by SHOTARO)

 この曲が洗礼の儀式だったのか。幕張を地獄に変えたメンバーは一度ステージを降り、『AЯK』のオープニングSE「The Final Call」で再スタート。Tatsuya(Dr)、Teru(Program/Vision)、Kazuki(G)、Daiki(G)がひとりずつ登場し、ラストにトーチを手にしたKoieが姿を現す。全員が登場し、会場が最高潮に盛り上がったところでビジョンのロゴに(映像上で)火をつけ、Crossfaithのシンボルマークを背負った赤いフラッグを掲げて「やろうか、幕張!」と「ZERO」になだれ込んだ。

Crossfaith『OUR FAITH WILL NEVER DIE』
Kazuki(Gt)(photo by cazrowAoki)

 「Leviathan」からの演出、ド派手な映像と照明、5人5様の衣装とメイクがまるでアニメのキャラクターのようなメンバー。この世界観こそがCrossfaithであり、Crossfaithに大きな会場が映える所以でもある。日本ではヘヴィミュージックはフィジカルで楽しむものというイメージがあるかもしれないけれど、元来メタルに派手な演出はつきもの。幕張メッセを舞台に、ただのライブではないCrossfaith独自のエンターテインメントを作り上げていた。
トランシーなビートに否応なく身体が跳ねる「HEADSHOT!」ではシューティングゲーム風の映像とともに緑のレーザーが飛び交い、獰猛なヘヴィネスが暴れる「DV;MM¥ SY5T3M...」では不気味なCGアニメが楽曲を盛り上げる。トライバルなアレンジを取り入れた「My Own Salvation」では炎の特効がバンバン打ち上がるなど、視覚的にも惹き込まれ、テンションがどんどんヒートアップしていく。

Crossfaith『OUR FAITH WILL NEVER DIE』
Daiki(Gt)(photo by SHOTARO)

 肉体を衝き動かす重低音と音圧は言うまでもない。鬼神のようなドラムソロでもオーディエンスを圧倒したTatsuyaのビート、時に自らもアジテーターと化すTeruのエレクトロサウンド、ツインギターとなったことでより力を増したKazuki&Daikiのリフワーク、そしてすべてを燃やし尽くすかのごときKoieの咆哮。新体制となって一年強だが、もともと盟友として切磋琢磨してきたDaikiの音と存在感を新たな武器に、より強靱なグルーヴを生み出している。時代とともに進化しつつも、Crossfaithにしか出せない色を失わずに突き進んできた孤高のヘヴィネスが幕張を揺らすさまが痛快だった。それをオーディエンスが全力で受け止め、EDMパートでは踊り狂い、ブレイクダウンではあちこちでサークルピットが大量発生する。これだけの幸福感と治安の悪さを併せ持つ光景は、なかなか出会えるものではない。

Crossfaith『OUR FAITH WILL NEVER DIE』
Tatsuya(Dr)(photo by cazrowAoki)

 缶ビールを開ける「プシュッ」の音を響かせた恒例の乾杯タイムのあと、Koieが「俺たちの原点に遡ってみましょうか」と過去に誘ったゾーンでも、バンドの進化が感じられた。披露されたのは1stアルバム『The Artificial theory for the Dramatic Beauty』収録の「FICTION IN HOPE」、2ndアルバム『The Dream, The Space』収録の「Technologia」から「Demise And Kiss」。よりメタリックなアレンジに初期衝動を孕みつつ、今の5人が鳴らせば見違えるような威力をともなって轟く。ビジョンに当時のロゴが表示される演出はエモーショナルだったが、決して過去を懐かしむだけの時間ではなかった。

Crossfaith『OUR FAITH WILL NEVER DIE』
Teru(Program/Vision)(photo by

 そして、「Demise And Kiss」では音源と同様にフィーチャリングボーカルとしてcoldrain・Masatoが登場。Koieと向き合ってハイトーンとシャウトを響かせ、オーディエンスを焚きつける。何度も共演しているふたりだが、今日のステージは特に重ねてきた歴史の重みが伝わってきた。

 さまざまな意味で胸を熱くさせたあと、「ライブでまだ一回もプレイしたことのない特別な曲」と紹介し、『AЯK』収録のバラード「Night Waves」へ。それまでと一転して浮遊感溢れるサウンドとKoieの優しい歌声に包まれ、今のCrossfaithが持つ“静”サイドを堪能した。

 この日登場したフィーチャリングゲストはMasatoだけではない。バウンシーなミクスチャー「L.A.M.N」ではSTRANGE BONESのボビー・ウルフギャングがラップを畳みかけ、メロディアスなエレクトロコア「FREEDOM」ではEnter Shikariのラウ・レイノルズがKoieとシャウトの応酬。さらに「God Speed feat. WARGASM」では、バックステージにMVと同じ車を横付けし、WARGASMのミルキー・ウェイとサム・マトロックが降りてくるという演出が! ただでさえアゲアゲなトランスチューンに過激な華を添え、会場を熱狂の渦に叩き込んだ。

photo by Takeshi Yao

 これらの共演が今日だけのスペシャルコラボなどではなく、すべてともに楽曲制作を経験した仲間だというのがすごい。国内外問わず幅広いアーティストと交わってきたCrossfaithの挑戦的な音楽性、慣例に縛られず誰しもを仲間にしてしまうメンバーの人間性が結実したステージだった。

photo by SHOTARO

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