『キミプリ』が描くアイドル像とは? “プリキュア×アイドル”の先駆者、歴代楽曲とキャラの系譜を辿る
この2月に放送がスタートした『プリキュア』シリーズ第22弾『キミとアイドルプリキュア♪』(テレビ朝日系/以下、『キミプリ』)。作品ごとに様々なコンセプトやモチーフを取り入れながら20年以上続いてきた本シリーズにおいて、初めて“アイドル”を全体のテーマに据えた作品として、タイトルが発表された当初から大きな注目を集めてきた。
ひと口にアイドルと言っても、その言葉が内包する意味合いは多様なため、本作においてアイドルがどのような存在として描かれるかは、今後の展開によって大きく変わってくるかもしれないが、本稿を執筆している時点で放送済みの第3話までを視聴すれば、いわゆるステージに立って歌い踊るアイドルをモチーフにした作品であることがわかる。
歌うのが大好きな中学2年生の主人公・咲良うた(CV:松岡美里)は、第1話「キラッキランラン♪キュアアイドルデビュー!」で妖精のプリルン(CV:南條愛乃)との出会いを経て、伝説の救世主・キュアアイドルに変身。人々からキラキラを奪うチョッキリ団と対峙することになるのだが、その敵を浄化する際のキメ技が、ステージで歌って踊って“ファンサ”することなのだ。キメ技のモーションに入ると、敵は強制的に着席させられ、キュアアイドルは突然出現したライブステージで、PPPHパートを含むアップテンポで煌びやかな挿入歌「笑顔のユニゾン♪」を歌唱。そしてキラキラのエネルギー弾をぶつけて敵を浄化し、キラキラを奪われた人を救う。いわばアイドルが歌やライブステージを通じてファンに元気や活力を与えるという構図が、そのまま『プリキュア』のバトルシーンになっている形だ。
また、第3話「勇気を出して♪キュアウインクデビュー!」で初登場した2人目のプリキュア、キュアウインク/蒼風なな(CV:髙橋ミナミ)は、キメ技の際に、ピアノの音色が印象的な挿入歌「まばたきの五線譜」を歌唱。母親がピアニストで自身もコンクール入賞歴を持つ彼女らしく、ステージではピアノを弾く姿がフィーチャーされる。そして今後登場予定の3人目のプリキュア、キュアキュンキュン/紫雨こころ(CV:高森奈津美)はダンスが得意という設定が明かされており、彼女もまたほかの2人とは違ったスタイルでのライブステージを披露してくれることだろう。
このようにアイドルをモチーフに『プリキュア』シリーズに新しい風を吹き込んでいる本作だが、実は過去のシリーズにもアイドルのプリキュアがいたことはご存知だろうか。ここからは『キミプリ』の先駆者とも言うべきプリキュアたちを紹介したい。
まず、“アイドル×プリキュア”と聞いて多くの人が真っ先に思い浮かべるであろう存在が、シリーズ第4作『Yes!プリキュア5』および第5作『Yes!プリキュア5GoGo!』に登場したキュアレモネード/春日野うらら(CV:伊瀬茉莉也)ではないだろうか。女優を目指して芸能活動を行う新人アイドルの彼女は、『Yes!プリキュア5』の劇中で歌手デビュー。そのデビュー曲「とびっきり!勇気の扉」はアニメの挿入歌としてオンエアされた数日後に実際にCDリリースされ、プリキュアメンバーが歌う初めてのシングル曲となった。
さらに『Yes!プリキュア5GoGo!』では2ndシングル「ツイン・テールの魔法」を発表し、こちらも劇中と連動する形でCDリリース。どちらの楽曲も80~90年代アイドルポップの流れを汲む清純路線の愛らしい曲調で、キュアレモネードの決め台詞「はじけるレモンの香り!」を彷彿させるフレーズを散りばめつつ、仲間との絆があるからこその勇気を歌った前者と、彼女のトレードマークであるツインテールの髪形をモチーフに溌溂なサマーソングに仕立てられた後者と、いずれも人気曲として愛されている。『Yes!プリキュア5』のアフレコ当時、まだ高校生だったという伊瀬のフレッシュな歌声もまた、アイドルらしさが感じられるポイントだ。
そして、シリーズ第10作『ドキドキ!プリキュア』の世界で人気アイドルとして活躍するのが、まこぴーの愛称で知られるキュアソード/剣崎真琴(CV:宮本佳那子)。劇中ではストリートシンガーからトップアイドルまで上り詰めた“歌姫”として描かれ、その人気と実力を証明するように、『プリキュア』シリーズとしては初めてのキャラクターによる単独アルバム『ドキドキ!プリキュア キャラクターアルバム ~SONGBIRD~』をリリース。
劇中ではミリオンヒットを達成したという設定のデビュー曲「~SONGBIRD~」をはじめ、彼女の凛々しく高潔な一面が表現されたデジタルロック「HOLY SWORD~勇気はキズナ~」、第40話「とどけたい思い!まこぴー新曲発表!」で敵役のレジーナ(CV:渡辺久美子)に想いを届けるために歌われた名バラード「こころをこめて」など、全8曲が収められている。キャストを務める宮本は、声優業を始める前から『Yes!プリキュア5』の前期エンディングテーマ「キラキラしちゃってMy True Love!」をはじめ数々のプリキュア楽曲を歌うシンガーとして活動していたことで知られ、人気アイドル兼プリキュアという難しい役どころを確かな歌唱力と表現力で見事に演じ切っている。